変形性膝関節症を有する高齢者の24時間行動ガイドラインの達成状況と精神的健康度および膝痛の関連

DOI
  • 出口 直樹
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
  • 小島 成美
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
  • 大須賀 洋祐
    国立長寿医療研究センター研究所 老年学・社会科学センターフレイル研究部
  • 畑中 翔
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
  • 平野 浩彦
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
  • 岡村 毅
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム
  • 粟田 主一
    東京都健康長寿医療センター研究所 認知症未来社会創造センター
  • 笹井 浩行
    東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>24時間行動に関するガイドラインでは、身体活動、座位行動、睡眠に対する推奨がされており、これらの推奨値を達成すれば身体・精神的な健康利益が期待できる。変形性膝関節症 (膝OA)を有する高齢者では身体活動、座位行動、睡眠が独立して精神的な健康や疼痛に関連する。このため、これらの各項目を複数達成することで、精神的健康や疼痛の有益性がさらに高まると期待される。本研究では、膝OAを有する 高齢者の24時間行動ガイドラインの達成状況が精神的健康度および膝痛と関連するか否かを検証した。 </p><p>【方法】</p><p>本研究は、2022年~2023年度に実施した板橋健康長 寿縦断研究の横断データを用いた。対象は70歳以上で膝OAを有する男女のうち、1)日常生活動作に困難感を有する者、2)認知機能低下者 (MMSE <23点)を除いた243名 (中央値78歳、女性78.1%)とした。主要評価項目はWHO-5で評価した精神的健康度不良 (<13点)、副次評価項目はverbal rating scaleによる膝痛とした。世界で唯一、上記3項目の推奨値を示しているカナダの高齢者24時間行動ガイドライン (中強度の身体活動時間;週150分以上/週、座位時間; 8時間未満/日、睡眠時間; 7~8時間/夜)の達成状況を、3項目達成、2項目達成、1項目達成、達成項目なしの4カテゴリに分類した。年齢、性別、BMI、併存疾患数、服薬数を共変量としたロジスティック回帰分析により、達成状況と精神的健康度不良および膝痛との関連をそれぞれ検証した。 </p><p>【結果】</p><p>達成状況の内訳は3項目達成21.0%、2項目達成46.1 %、1項目達成24.3%、達成項目なし8.6%だった。3項目達成した人と比較して、2項目達成した人、1項目達成した人、達成項目なしの人はそれぞれ、精神的健康度不良のオッズが有意に高かった (オッズ比[95%信頼区間]: 2.34 [1.14, 4.84]、3.91 [1.68, 9.12]、3.10 [1.02, 9.45]; p for trend <0.01)。達成状況 と膝痛の関連は示されなかった(p for trend = 0.095)。 </p><p>【考察・結論】</p><p>膝OAを有する高齢者において、24時間行動ガイドラインの達成項目が少ないほど、精神的健康度が低くなる可能性が示された。膝OAを有する高齢者において精神的健康度が高いとうつ病のリスクが低く、人生の満足度が高いとされる。そのため、この集団にも24時間行動ガイドラインの達成を促す必要があるかもしれない。今後は、24時間行動の客観的な測定や、縦断研究による因果関係の検証が求められる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」 (文部科学省、厚生労働省、経済産業省)に従い作成した。電子データは、研究対象者の個人情報保護のため、ID番号を用いて保存した。本研究は東京都健康長寿医療センター研究所の倫理委員会の承認を得た (承認番号:R21-56番)。</p>

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