コロナ禍の生活変化が1年後の健康状態に及ぼす影響―山間地域在住高齢者における前向きコホート研究̶

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抄録

<p>【目的】</p><p>新型コロナウイルス感染症の長期化は、フレイルへの 移行など高齢者の生活や健康に多大な影響を及ぼした。我々は、第9回本学術大会にて、山間地域の後期高齢者を対象に、コロナ禍における生活変化がフレイルに影響していることを報告した。今回は、コロナ禍における生活変化が1年後の健康状態にどの程度影響を及ぼしているかを検討したので報告する。 </p><p>【方法】</p><p>対象は、奈良県曽爾村で開催された2021年度住民健 診 (ベースライン)を受診した65歳以上高齢者のうち、2022年度住民健診結果と突合できた92名 (平均74.7±5.6歳)である。 2021年度健診では、コロナ禍での生活変化を問う質問票 (QCL; Questionnaire for Change of Life)、多剤併用有無 (6剤以上)及び基本情報 (年齢、性別、BMI)を聴取し、2022年度健診で実施した広く健康状態を把握するための後期高齢者の質問票 (通称フレイル健診)およびフレイル判定のためのFSI (Frailty Screening Index)結果と突合した。後期高齢者の質問票および QCLは合計得点化して扱い、高得点ほど負の回答が多いことを反映する。FSIは、フレイル/プレフレイル/頑強に判別した。統計解析は、2021年時点のコロナ禍における生活変化が1年後の健康状態に及ぼす影響を検討するため、目的変数を後期高齢者の質問票 (点)あるいはフレイル状態 (FSI結果)、説明変数を QCL (点)とした多変量解析を実施した。共変量に性別、BMI、多剤併用を投入し調整した。なお、年代による特性を検討するため、前期・後期高齢者別にそれぞれ検討した。いずれも有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p>解析対象は、前期高齢者58名と後期高齢者34名であ った。後期高齢者の質問票を目的変数とした重回帰分析の結果、前期高齢者でのみ多剤併用 (β=0.358)が後期高齢者の質問票結果と関連した。フレイル状態 (FSI結果)を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果は、後期高齢者でのみQCL (β =0.382)がフレイルと関連した。 </p><p>【考察】</p><p>前期高齢者では、コロナ禍の生活変化の影響が1年後の健康状態に影響していなかったが、多剤併用が1年後の健康状態に影響していることが示唆された。前期高齢者のみで認めたという点において特徴的な結果であった。一方、後期高齢者は生活習慣の変化がより長期にわたって影響していることが考えられたため、生活習慣の変化を把握することの重要性が示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、ヘルシンキ宣言を遵守し、奈良学園大学研究倫理審査委員会の承認を得た (承認番号:3-010)。対象者には研究依頼書に基づき、本研究の目的・意義および対象者の利益・不利益、個人情報保護について説明を行った。理解と同意が得られた場合、研究協力同意書に署名を得たうえで調査を実施した。</p>

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