新宿区における、医療介護一体的事業における理学療法士のかかわり

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>医療・介護において、地域連携、多職種共働、官民連携など ネットワーク (NW)を構築することは重要である.急性期病院、回復期病院、クリニック、老健、訪問リハなど、新宿区内のリハビリテーション職種が勤務する施設のリハビリNWを2014年に構築した.NWでは共通サマリーの作成や新宿区役所と連携した高齢者向け区オリジナル筋力トレーニング「しんじゅく100トレ」の開発と支援や住民主体の活動支援を行っている.今回「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施事業」にNW所属理学療法士(PT)が検討委員として参加する機会を得た.栄養と運動の観点から、PTにはどのような視点が必要なのかを報告する.</p><p>【方法】</p><p>高齢者の低栄養防止・重症化予防の目的とし、国保データベ ースからハイリスク者 (BMI 20以下かつ6か月で体重減少の自覚または前年度体重比較-2㎏)を抽出し、訪問指導による個別支援を行った.支援を行う医療専門職チームは、保健師、管理栄養士、歯科衛生士、PTから構成され、3か月間で初回・中間・最終の3回の介入を行った.低栄養の原因分析、具体的な目標設定、生活に即した食事指導、栄養を加味した運動プログラムなどを提供した.</p><p>【結果】</p><p>対象1:86歳男性.総合事業対象者、運動デイサービス週1回通所し,妻を自宅介護していた.体重は2.3kg減少し、BMI 18.6.運 動には熱心だが食への意欲は低く、自分より妻を心配していた.介入後、体重は維持、下肢周囲長0.3㎝増加、食事量摂取は増え、妻と自宅で運動を一緒に行う行動変化がみられた. 対象2:80歳男性.要支援2、運動デイサービス週2回通所していた.体重は3年間で10kg減少し、BMI 18.7、Hb 9.4.妻からは「食べているけど痩せていく、家でできる運動も知りたい」と希望があった.介入後、体重は0.8㎏増加し食事量摂取は増加した.しかし介入中に口腔内腫瘍を発見し、病院治療へと移行した.</p><p>【考察】</p><p>対象は運動量に対して栄養摂取量が不十分であったが、本人、家族は認識がなかった.食事品目は多いが摂取量の不足、食べやすい食事品目によるエネルギー量の低下、腫瘍による消費カロリーが増大していたことが要因であった.PTは「食事はとれている」という本人の訴えと実際は乖離する可能性を考慮する必要がある.生活に基づいた栄養指導と運動指導においては、低栄養の原因を多職種で協議し、適切な介入が必要である.</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本事業についての個人情報の取り扱いについては、事前に説明し承諾を得ている.</p>

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