月経痛に対する予防理学療法の可能性

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抄録

<p>【はじめに】</p><p> 日本産婦人科学会によると月経困難症による痛みは“月経痛”と表現され,その割合は73.3‒92.0%との報告がある。なかでも原発性月経困難症は「骨盤に識別可能な病理学的変化がない場合に起こる下腹部の痙攣性疼痛」と定義され,原因は「子宮内膜から放出されるプロスタグランジンの産生量増加がもたらす子宮筋の過剰収縮による虚血」とされる。虚血が原因の月経痛に対し,理学療法士がアプローチできる手段の一つに運動療法がある。そこで今回,運動療法に焦点を当て,月経痛に対する予防理学療法の可能性を現在までにわかっている知見をもとに述べる。 </p><p>【月経痛に対する運動療法のエビデンスとその問題点】</p><p> 月経痛緩和を目的とした代表的な運動に有酸素運動,ストレッ チング,体幹の強化運動があり,1回約45‒60分,週3回以上行うことが推奨されている。しかし,実際に運動を実施している者は,我々の研究において4.6%であった。この背景の一つに,全身運動を継続することが難しい点が考えられる。そこで,局所的な運動による子宮動脈の血行動態の改善を見込んで基礎研究を行ったため紹介する。 </p><p>【骨盤底筋群の随意収縮が子宮動脈の血行動態に与える変化】</p><p> 骨盤底筋群は内陰部動脈に支配され,子宮動脈と共に内腸骨動脈から分枝する血管で子宮動脈と隣接した解剖学的位置関係にある。そこで,骨盤底筋群の随意収縮が子宮動脈の血行動態に与える変化を検証した。20-45歳の健常成人女性を対象に遅筋 と速筋を組合わせた骨盤底筋群の随意収縮運動を実施した結果,子宮動脈の血流速度の増大を得た。 </p><p>【月経痛に対する予防理学療法の可能性と今後の展望】</p><p> 虚血が原因の月経痛に対し予防的に運動療法で対処するために は,筋ポンプ作用による循環動態の改善が期待される。骨盤底筋群の随意収縮により子宮動脈の血流速度が増大したことは,虚血を原因とする月経痛を予防する可能性があると考えられる。骨盤底筋群の随意収縮はあらゆる肢位において実施可能であり,全身運動を伴わないことから取り入れやすい。今後は,月経痛を有する者に対する検証が必要になると考える。 </p><p>【結語】</p><p> 月経痛に対する予防理学療法の学際性は少なく,未発展な分野である。一方,理学療法士にできることの可能性も秘めていることから,今後も日々の対象者に向き合いながら学際性を高める努力をしていきたい。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本演題発表の一部は兵庫医療大学倫理審査委員会の承認を得て実施したものである (承認番号:第20011号,第 20011‒2,第20023号,第20023-2号)。</p>

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