地域在住高齢者は若年者より前かがみで歩くが躓きやすいわけではない
抄録
<p>【はじめに】</p><p> 高齢者の歩行は速度の低下が特徴であるが、速度の低下がみられなければ、若年者と変わらない歩き方といえるのだろうか。われわれは、地域在住高齢者と健常若年者それぞれの歩行計測データを用い、性別と身長、体重をマッチさせ、運動学的変数および躓きに関する指標を両者で比較することとした。本研究の目的は、歩行速度の影響を除いた時、健康な高齢者と若年者の歩行では何が違うのか、また、違いがあるとすれば、それは転びやすさと関連しているのかを明らかにすることである。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は2017年から2019年に行われた地域の体力測定会にて、 歩行計測を行った高齢者325名 (72±4歳, 男61名)と、同様の計測を行った若年者100名 (22±2歳,男45名)であった。歩行計測は、快適と最大努力の2条件で、三次元歩行解析により、骨盤および下肢の矢状面運動角度を算出した。また、躓き関連変数 (最大つま先高さ、最小つま先高さ、躓き確率)も算出した。統計は、歩行変数への性別、身長、体重の影響を最小にするために、傾向スコアにより高齢者、若年者の比が1:1の比率でマッチングした後、関節運動特徴値と躓き関連変数の平均値について、歩行速度を共変量とした共分散分析で両者を比較した。 </p><p>【結果】</p><p> 高齢者76名 (男28名)若年者76名 (男29名)がマッチしたペアで選択された。快適歩行速度は高齢者が速く (1.50 vs. 1.31 m/秒 , p<0.001)、最大努力速度は若年者が速かった (2.00 vs. 2.34 m/秒, p<0.001)。関節角度は歩行速度で調整しても、高齢者で骨盤の最大前傾角度、股関節最大屈曲角度ともに大きかった (それぞれp<0.001)。躓き関連変数は最大努力条件で高齢者と若年者に差が見られたが、高齢者は若年者よりも最小つま先高さが高く (3.8 vs. 3.3 cm, p<0.001)、躓き確率も小さかった (0.06 vs. 0.09%, p=0.006)。 </p><p>【考察】</p><p>地域で元気に暮らす高齢者の歩行は、速度の影響を除けば、「少し前かがみ」の姿勢で歩くことが特徴であり、こうした歩き方の変化は躓きやすさとは必ずしも結び付いていないことが明らかとなった。少し前かがみの歩行は若年者においても斜面の上りで見られる特徴でもある。高齢者は筋力低下により、知らずのうちに平地でも坂を上るような歩行様式に変わっているのかもしれない。 </p><p>【結論】</p><p> 地域で元気に生活している高齢者は若年者より少し前かがみで歩くが躓きやすいわけではない。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施した (承認番号2018-008B2)。また、本研究の対象者には書面および口頭にて研究目的および内容について説明し、研究協力については書面による同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
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日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 2.Suppl.No.1 (0), 166-166, 2024-03-31
日本予防理学療法学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390299673817448192
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- ISSN
- 27587983
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可