妊娠期・産後の機能障害に対する予防理学療法の可能性

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<p>【はじめに】</p><p>妊娠・出産は女性にとって非常に重大なライフイベントであり、妊娠中の胎児の成長に伴う形態的変化は、姿勢や動作に影響を及ぼし、腰背部・骨盤帯痛、尿失禁、股関節痛や膝関節痛などを引き起こす要因となる。また経膣分娩時には骨盤底筋群の伸張負荷や会陰裂傷などにより重度な骨盤底機能障害を呈する可能性もある。 こうした問題に対する妊娠中からの予防的介入に関し、尿失禁 予防のための骨盤底筋トレーニングの妊娠中からの開始において一次予防効果が示されており、専門家による指導下での集中的プログラムの提供は推奨グレードAとされている。一方、腰 背部痛など他の問題に対する予防的介入はエビデンスが未確立であり、少子高齢社会の状況を鑑みても取り組みは急務である。今回、研究と臨床実践の事例から、妊娠期・産後の機能障害に対する予防理学慮右脳の可能性について検討を行ったので報告する。 </p><p>【実践例紹介】</p><p>妊婦を対象とした基礎研究において、妊婦の身体的変化に伴い身体慣性パラメータが変化しており、力学的・運動学的にも影響を及ぼす可能性が示された。実際、バイオメカニクス解析を用いて縦断的研究を行った結果、起立動作や歩行中の姿勢制御戦略の変化、動作遂行時の円滑さや安定性の欠如がみられ、身体的負荷の増大による影響が危惧された。こうした研究データを踏まえ、地域における産婦人科や整形外科などとも連携し、妊娠中から産後における機能障害の発現や重症化の予防を目的とした理学療法の実践を進めている。 </p><p>【結論】</p><p>妊娠中から産後に生じる症状は、その後継続しさらに加齢に伴う変化が組み合わさることで問題が複雑化することが危惧される。そのため、妊娠中から産後にアプローチすることは、以降の女性のライフステージにおいて生じる健康問題を予防することにつながる。 妊娠中の経過や産後の身体状況は次子の妊娠・出産や復職にも強く影響すると思われ、この時期を身体的トラブルなく快適に過ごせることは、少子化対策の一助となりうると考える。 女性の社会進出の観点から、健康経営を推進するうえでも、妊娠・出産期を生育サイクルとして捉えると、胎児のその後のライフサイクルにも引き継がれることになるため、この時期の女性の健康問題への対応は、次世代への健康に対する投資 (経済産業省,2019)とも捉えることができ、非常に重要な意味がある。 </p><p>【倫理的配慮】【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>報告に含まれる研究に関しては、研究代表者所属機関において研究倫理委員会の承認を得、対象者に研究内容について十分な説明を行ったうえで同意書への署名により同意を得て実施している。</p>

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