高齢者における相対的立ち上がりパワーと,施設内歩行能力の関連性及びフリーハンド・杖歩行自立のカットオフ値の検討

DOI
  • 池本 祐貴
    いの町立介護老人保健施設仁淀清流苑 リハビリテーション部
  • 木下 裕矢
    いの町立介護老人保健施設仁淀清流苑 リハビリテーション部
  • 小笠原 圭吾
    いの町立介護老人保健施設仁淀清流苑 リハビリテーション部
  • 志賀 舞
    いの町立介護老人保健施設仁淀清流苑 施設長 いの町立国民健康保険仁淀病院 外科
  • 竹林 秀晃
    土佐リハビリテーションカレッジ 理学療法学科

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p> 高齢者の下肢筋力・虚弱性を評価する有効な指標として 30s-SitToStand(以下,STS)Testが挙げられる.近年,その起立 回数から算出する相対的STSパワーが注目されている.相対的 STSパワーと身体機能の関係は検証されているが,日常生活活 動(以下,ADL)との関連性を検討した報告は少ない.移動動作制限は,病態や認知機能と独立して,将来のADL動作障害の予測に役立つとされている.今回は,ADLの中でも歩行に着目し,高齢者の相対的STSパワーと,施設内歩行能力の関連性及びフリーハンド・杖歩行自立のカットオフ値について検討した. </p><p>【方法】</p><p> 対象は2022年5月~2023年4月に当施設を利用した高齢者102名(年齢:86.5±7.3歳,BMI:21.8±4.5kg/m 2,女性:70名)であった.重度な神経学的疾患を有する者,荷重痛が生じる者,著明な認知症状等により測定困難である者は除外した.歩行能力はBarthelIndex(以下,BI)の歩行と, FunctionalIndependenceMeasure(以下,FIM)の歩行・車椅子の項目を用いて評価した.相対的STSパワーは43cm高の椅子を使用し0.9×g×(身長×0.5-椅子高)/30s×n-of-re-p1s×0.5の式にて算出した.相対的STSパワーと歩行能力の関係はSpearmanの順位相関係数で比較した.そして,BI歩行自立(FIM歩行・車椅子修正自立以上)・非自立群に分類し,ROC曲線とYouden Indexを用いて相対的STSパワーのカットオフ値を算出した.統計処理はRver.3.6.3とG*Power3.1を使用した. </p><p>【結果】</p><p> 平均値と中央値 (25-75%四分位範囲)は,相対的STSパワー1.4 ±1.0W/kg,BI歩行10点(10-15点),FIM歩行6点(5-6点)であった.相関分析では,相対的STSパワーとBI歩行はρ= 0.78(95%CI0.58-0.79),FIM歩行・車椅子はρ= 0.75(95%CI0.62-0.81)であった(p<0.001,検出力>0.95).カッ トオフ分析は,カットオフ値1.7W/kg, AUC93.0%(95%CI89.6-98.3),感度85.1%,特異度88.6%(性別 と年齢を考慮したAUC93.8%)であった. </p><p>【考察】</p><p> 相関分析から,相対的STSパワーが高値ならば施設内歩行能力 も高い関係性が示唆された.ADLの多くは体重支持にて行う為,相対的筋力は身体機能やQOLと関連性が高いと報告されている.また,高齢者のSTSパワーと移動能力の関連性は若年者より高い傾向にある.以上の先行研究や本研究の結果を考慮すると,相対的STSパワーカットオフ値は,高齢者施設における歩行自立可否の判定指標の1つとして活用できる可能性がある. </p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p> 本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究対象者の個人情報が特定されないように配慮した.対象者に本研究の概要を書面と口頭にて説明し,同意を得た.また,土佐リハビリテーションカレッジ研究倫理委員会の承認(TRC102201)を受けた.</p>

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