介護老人保健施設入所者における食堂の座席で起立運動を反復できる回数とフロア内歩行の関係

DOI
  • 大村 優慈
    湘南医療大学 保健医療学部
  • 脇島 克介
    介護老人保健施設ライフサポートねりま リハビリテーション部
  • 酒向 正春
    介護老人保健施設ライフサポートねりま 診療部 ねりま健育会病院 診療部
  • 小笠原 尚和
    介護老人保健施設ライフサポートねりま リハビリテーション部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>介護老人保健施設 (老健)入所者への個別リハビリテーションの提供量は少なく、日常生活活動の維持・向上に向けて、セルフエクササイズや集団運動の導入を検討する必要がある。食堂の座席 (食席)での反復起立運動はセルフエクササイズや集団運動に導入しやすいが、食席で起立運動を反復できる回数 (食席起立回数)と歩行などの日常生活活動の関係が不明であり、回数の目標設定が難しい。そこで、本研究の目的は、老健入所者における食席起立回数とフロア内歩行の関係を明らかにすることとした。 </p><p>【方法】</p><p>対象は老健入所者86名とし、医学的問題または認知機能の問題で食席起立回数が測定困難な者は除外した。年齢は 84.7±9.8歳、性別は男性:24名、女性:62名、介護度は2.7 ±1.2、主疾患は骨折:20名、脳血管疾患:18名、廃用症候群 :18名、認知症:11名、神経筋疾患:9名、関節疾患:4名、 脊髄損傷:3名、その他:3名であった。食席起立回数は食席で手をテーブルまたは椅子の肘掛けについて起立運動を反復できる回数とした。椅子は座面高44cmものと42cmのものを用意し、対象の下腿長に近い座面高の方を用いた。座面高44cmの椅子には高さ71cmのテーブル、座面高42cmの椅子には高さ69cmのテーブルを組み合わせた。制限時間は設けず快適速度での実施としたが、途中で動作が1秒以上停止しないようにした。回数の上限は50回とした。統計解析では、対象をfunctional independence measureの歩行が1点の車椅子群:34名、2点から5点の介助群:10名、6点の修正自立群:33名、7点の自立群:9名に分け、5%に設定した有意水準をHolm法で補正した Mann-WhitneyのU検定で食席起立回数を群間比較した。連続する群間に有意差があった場合はreceiver operating characteristic curveを作成し、曲線下面積とYouden indexによるカットオフ値を求めた。 </p><p>【結果】</p><p>車椅子群 (10.3±17.5回)より介助群 (16.0±14.8回)で食席起立回数が有意に多く、曲線下面積は0.725、カットオフ値は5回であった (感度:0.900、特異度:0.647)。介助群より修正自立群 (33.1±15.6回)で食席起立回数が有意に多く、曲線下面積は0.788、カットオフ値は20回であった (感度:0.848、特異度:0.700)。修正自立群と自立群 (37.8±15.6回)の食席起立回数に有意差はなかった。 </p><p>【考察】</p><p>老健入所者における食席起立回数は、5回以上が介助歩行、20回以上が修正自立歩行の目安となる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は介護老人保健施設ライフサポートねりまの研究倫理審査委員会の承認を得て行った (承認番号:倫 -29)。介護老人保健施設ライフサポートねりまでは、日常臨床の中で得られたデータを研究に用いることについて、入所当日に本人と家族に文書を用いて説明し、同意を得ている。本研究は、日常臨床の中で得られたデータをもとに実施したものである。</p>

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