フレイル予防事業における専門職らによる講義およびヘルスリテラシーの評価をはじめとする介入効果

DOI
  • 烏谷 香蓮
    錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部
  • 今田 健
    錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部 社会福祉法人こうほうえん 法人本部

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 鳥取県米子市では、2019年度より自治体によるフレイル予防事業が実施されている。2021年度よりフレイルと判定された地域在住高齢者を対象に、当院に在籍する医師、薬剤師、看護師を含む専門職らによるフレイル予防教室を開始した。 本研究の目的は、フレイル予防事業の参加者に対して、専門職によるヘルスリテラシーの評価を行い、講義などの介入前後における変化を把握することであった。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は、米子市が実施するフレイル予防事業において、フレイルと判定された高齢者53例 (平均年齢75.9±5.2歳)であった。 フレイル予防教室は、2021年9月~2022年12月の間に、米子市の温浴施設にて実施した。参加者は、週1回、全12回の参加であった。介入は、1回あたり約10名の対象者に対して、医師、薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士など当院の専門職が90分間実施した。内容は、専門職らによる講義とエクササイズであった。講義は、各職種の専門的な視点からフレイル予防に特化した知見を伝えるため、プレゼンテーションソフトを用いた方式にて図表を主に使用し、助言を行った。介入前後のEuropean Health Literacy Survey 日本語版 (以下、HLS-EU-Q47)を評価し、平均値を比較検討した。 </p><p>【結果】</p><p> 比較検討の対象は、32例 (平均年齢77.2±5.8歳)であった。 HLS-EU-Q47の総得点は、初回33.2±9.4点、最終33.3±8.0点であった。特に、ヘルスケア領域の項目では初回31.6±10.1点から最終33.0±8.4点へと向上が認められた。 </p><p>【考察】</p><p> ヘルスリテラシーの重要性は近年国際的な関心を集めている。複数の国を対象に行われた調査によると、日本のヘルスリテラシーは欧米やアジア諸国と比べて低かったと報告されている。本調査においてHLS-EU-Q47の総得点は、初回から日本人の平均25.3±8.2点を上回る結果であり、介入前から健康づくりや疾病予防に関心の高い高齢者が多かったと推察される。専門職らによる講義は、疾病予防や重度化防止の啓発、情報の信頼性の確認と意思決定スキルを学ぶ機会になったと考える。 </p><p>【結論】</p><p> 知的活動を含むフレイル予防の取り組みは、地域在住高齢者のヘルスリテラシー向上に寄与した。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本調査はヘルシンキ宣言に基づいて実施し、当院における倫理委員会の承認を受けた。参加者には文書または口頭にて調査目的や方法、内容について説明し、任意参加であること、調査途中でも本人の意思でいつでも中断できること、その結果不利益を受けないことを十分説明して、参加協力を求めた。また、調査から得られたデータは、研究以外の目的には使用せず、個人情報の漏えいを防止した。公表については個人の名前などが一切わからないよう匿名化し、プライバシーの保護について十分配慮した。</p>

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