うつ徴候と身体活動がサルコペニアの進行に及ぼす影響

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>サルコペニアは要介護や死亡リスクの上昇につながることから予防策の確立が重要である。近年、サルコペニアとうつ徴候の関連についての報告が散見されるが、うつ徴候がサルコペニアの発生に影響するかは十分に検討されていない。またサルコペニアとうつ徴候の関連に身体活動の低下が介在する可能性が示唆されているが、うつ徴候と身体活動の関連がサルコペニアの進行に影響を及ぼすかについても十分に明らかにされていない。本研究では、うつ徴候がサルコペニアの進行に関連するかどうかを検討し、さらにうつ徴候を有していても身体活動が保護因子になりうるかを明らかにすることとした。 </p><p>【方法】</p><p>対象はベースライン時点でサルコペニアでない地域在住高齢者2,484名とした。サルコペニアは、European Working Group on Sarcopenia in Older People 2に則り、ベースラインと4年後のフォローアップで評価した。うつ徴候は、 Geriatric Depression Scale-15項目版で6点以上の場合とした。身体活動は、1)軽い運動・体操を、1週間に何日くらいしていますか、2)定期的な運動・スポーツを、1週間に何日くらいしていますか、の両方の質問にしていないと回答した場合に身体不活動と定義した。ロジスティック回帰分析にて、うつ徴候と身体不活動が4年後のサルコペニア (Probableを含む)の発生に関連するかどうかを検討した。 </p><p>【結果】</p><p>うつ徴候と身体不活動はそれぞれ独立してサルコペニアの新規発生と関連していた (オッズ比: 1.37、95%信頼区間: 1.00-1.88; オッズ比: 1.29、95%信頼区間: 1.01-1.63)。うつ徴候と身体活動の組み合わせ効果を検討した結果、うつ徴候がなく身体活動が保たれている場合と比較し、うつ徴候があり身体不活動を伴う場合はサルコペニアの新規発生と関連していた (オッズ比: 1.88、95%信頼区間: 1.18-3.00)。一方で、うつ徴候があっても身体活動が保たれている場合には有意な関連は認められなかった (オッズ比: 1.29、95%信頼区間: 0.86-1.94)。 </p><p>【考察・結論】</p><p>うつ徴候がある場合は将来のサルコペニア発生のリスクが高まり、身体不活動がそのリスクをさらに高めることが明らかとなった。一方、うつ徴候があっても身体活動の確保はサルコペニア発生に対して保護的な働きをする可能性が示唆された。サルコペニアに対し身体活動は有効な予防戦略と報告されているが、うつ徴候がある場合にでも有効な予防戦略となる可能性がある。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員会の承認を得た上で実施した。またヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分留意し、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。</p>

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