医原性サルコペニアを有する高齢呼吸器疾患患者においてCovid-19隔離下のセルフエクササイズの実施が運動耐容能維持につながった1症例

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Abstract

<p>【はじめに】</p><p> 急性期病院では高齢者の19.8%が医原性サルコペニアを発症すると報告されており,サルコペニアを有するとADLやQOL低下を招きやすい.先行研究において入院加療後に酸素療法が不要な Covid-19罹患者の24%に運動耐容能の低下を認めると報告されている. 急性期における軽症Covid-19罹患者に対し1週間の呼吸筋エクササイズを中心とした遠隔リハビリテーションを実施することで6MWDの改善量が多いと報告されているが,レジスタンストレーニングによる介入報告は我々が渉猟し得た限り見られない.今回,隔離期間中にレジスタンストレーニングを中心としたセルフエクササイズが運動耐容能維持に繋がったと思われる症例を経験したので報告する. </p><p>【症例紹介】</p><p> 症例は既往に慢性閉塞性肺疾患(GOLD Ⅰ期)を有する70歳代男性.X日に38.8℃の熱発し X+2日に呼吸状態悪化を認め,急性喉頭蓋炎と診断.同日入院しX+4日にリハビリ開始.X+7に膿胸を発症し,以降抗生剤治療,胸腔ドレナージを実施.X+38日に院内で無症候性Covid-19に罹患.X+51日までの2週間隔離となる.その後 ,X+53日に自宅退院となる. </p><p>【評価結果】</p><p> X+30~35日に隔離前に評価を実施.体重:58.1kg,BMI:20.8,四肢骨格筋指数(以下SMI):6.6kg/m2,握力:17.1/22.2kg, 6分間歩行試験 (以下6MWD ):330m(実施後 SPO2:88%,修正Borg4),FIM(歩行):7 点であった. </p><p>【介入内容と結果】</p><p> 隔離前は呼吸リハビリテーションを中心に実施.2週間の隔離中はスクワットなどのレジスタンストレーニングを中心としたセルフエクササイズを10回×2set,1日2回,修正Borg4-5程度の疲労感で毎日実施するように指導した.X+51日の評価では,体重 :58.4kg,BMI:20.9,SMI:7.4kg/m2, 握力:15.3/21.9kg 6MWD:320m(実施後SPO2:87%,修正Borg3),FIM(歩行):7点であった. </p><p>【考察】</p><p> サルコペニアを有する高齢呼吸器疾患患者における6MWDの決定因子には歩行速度と下肢筋力が挙げられると報告されている.また,レジスタンストレーニングは8-12回の反復で疲労感が生 じる運動を1-3set,2-3回/週程度で実施することが推奨されており,本症例はこれらの頻度以上でレジスタンストレーニングを実施可能であったことが運動耐容能維持に繋がったことが示唆される. </p><p>【結語】</p><p> サルコペニアを有する高齢呼吸器患者においてCovid-19隔離期間中のレジスタンストレーニングを中心としたセルフエクササイズが運動耐容能維持に繋がることが示唆された. </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 症例報告を行うにあたり,ヘルシンキ宣言に基づき患者本人へ説明,同意を得た.</p>

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