急性期病院における高齢大腿骨骨折患者の意欲とFIM効率との関連性の検討

DOI
  • 伊藤 春佳
    医療法人社団永生会南多摩病院 医療技術部リハビリテーション科
  • 田井 啓太
    医療法人社団永生会南多摩病院 医療技術部リハビリテーション科
  • 瀬戸 景子
    医療法人社団永生会南多摩病院 医療技術部リハビリテーション科
  • 倉田 考徳
    医療法人社団永生会南多摩病院 医療技術部リハビリテーション科

抄録

<p>【目的】</p><p>高齢者において大腿骨近位部骨折は脆弱性骨折の好発部位の一つである.大腿骨近位部骨折患者では骨の脆弱性に加えて,受傷後の日常生活動作(ADL)低下から再転倒のリスクが高く,高率に二次性骨折を受傷しやすい.そのため,骨折後のADL向上は二次性骨折予防のためにも重要である.ADL向上の因子として,意欲の低下がリハビリテーションの進行に影響することを臨床場面で経験する.しかし,大腿骨近位部骨折の急性期において意欲低下とADLの関連についての報告は少ない.そこで,本研究は大腿骨近位部骨折患者の入院時の意欲とADLの関連について検討した.</p><p>【方法】</p><p>対象者は,2022年1月から12月に当院へ入院した75歳以上の 大腿骨近位部骨折患者で手術を施行された120例(85.5±6.9歳,男性20名)とした.調査項目は,年齢,性別,長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),簡易栄養状態評価表(MNA-SF),握力,在院日数,入・退院時の機能的自立度評価表(FIM),およびFIM効率とした.意欲の評価はVitality Index(VI)を用い,7点以下を低意欲群,8点以上を高意欲群として2群に分類した.統計学的解析は,意欲による2群間の比較に対応のないt検定, ピアソンのχ二乗検定を用いた.意欲低下がADLに与える影響について, VIと背景因子を独立変数,FIM効率を従属変数とする重回帰分析をステップワイズ法により検討した.</p><p>【結果】</p><p>対象者のうち低意欲群は65例(54.2%),高意欲群は55例 (45.8%)であった.2群間において,低意欲群は高意欲群と比較してFIM効率が有意に低かった(P<0.05).FIM効率に影響を与える因子としてVI,HDS-R,握力,入院時FIMが抽出された.重回帰分析において,これらの独立変数で調整してもVIはFIM効率と有意に関連を示した(β=0.11,P<0.05).</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果より,大腿骨近位部骨折患者においてVIはFIM効率に影響する有意な関連因子であった.急性期の大腿骨近位部骨折患者では意欲がFIMの改善に影響することが示唆された.意欲が低下している患者は退院後の活動量の低下につながりやすく,身体機能が維持されないことから二次的骨折を起こしやすいことが予測される.そのため,入院時の意欲が退院後の二次性骨折予防にも影響する可能性がある.今後は二次性骨折予防に向けて縦断研究を行い意欲とADLとの因果関係を明らかにしていきたい.</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行った.また、データ収取・集計には個人が特定できないよう配慮して実施した.</p>

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