大腿骨近位部骨折患者における褥瘡発生に関わる因子の検討

DOI
  • 田井 啓太
    医療法人社団永生会南多摩病院 リハビリテーション科
  • 五十嵐 康太
    医療法人社団永生会南多摩病院 リハビリテーション科
  • 伊藤 春佳
    医療法人社団永生会南多摩病院 リハビリテーション科
  • 多賀井 祐聡
    医療法人社団永生会南多摩病院 リハビリテーション科
  • 斎藤 小百合
    医療法人社団永生会南多摩病院 看護部
  • 布田 麻矢
    医療法人社団永生会南多摩病院 看護部
  • 切手 純代
    医療法人社団永生会南多摩病院 看護部
  • 倉田 考徳
    医療法人社団永生会南多摩病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【目的】</p><p>大腿骨近位部骨折患者は術前の不動期間や術後の臥床、疼痛により褥瘡の発生リスクが高いと考えられる。しかしなが ら、大腿骨近位部骨折患者の褥瘡発症時期や発症に関わる因子に関して報告した研究は見られない。そこで大腿骨近位部骨折患者における褥瘡の発生リスクについて検討した。 </p><p>【方法】</p><p>2021年1月から2022年12月に当院へ入院した大腿骨近位部骨折患者を対象とした。測定項目は褥瘡発生の有無、年齢、性別、要介護度、入院時意識レベル、入院期間、入院時・退院時の機能的生活自立度 (FIM)、在院日数、長谷川式認知機能スケール (HDS-R)、Body Mass Index (BMI)、Vitality Index (VI)、握力、簡易栄養状態評価表 (MNA-SF)とした。374名 (褥瘡発症者20名)のうちデータ欠損のなかった118名 (褥瘡発症者 16名)を解析対象とした。統計解析として褥瘡発生群と非発生群の2群に分け、各項目についてwelchのt検定またはχ2検定を実施した。 </p><p>【結果】</p><p>褥瘡を発症した20名のうち術前に褥瘡を発症した患者が5名で、受傷前に歩行が困難であった患者は5名であった。2群比較の結果入院時FIM(褥瘡群40.0±15.2点、非褥瘡群50.6 ±15.7点、p=0.01)とVI (褥瘡群3.8±4.3点、非褥瘡群7.2±2.3点、p<0.005)にのみ有意差を認めその他の項目に有意差を認めなかった。 </p><p>【考察】</p><p>大腿骨近位部骨折患者における褥瘡の発症因子について、入院時FIMは術後のADLとの関連性が高く、ADL改善は離床機会・活動量増加に繋がることから褥瘡の発症因子と関連したと考えられた。その他の因子では一般的な褥瘡発症のリスク因子である栄養状態や認知機能、加齢、BMIに有意差は認めず VIのみ有意差を認めた。VIは食事や排泄、運動、起床等の意欲について評価した指標であり、リハビリテーションや離床への意欲が重要であるとともに、栄養や認知機能、握力等の単独の指標より包括的な要素を含んだ意欲が褥瘡発症と関連する因子である可能性が示唆された。 </p><p>【結論】</p><p>大腿骨近位部骨折患者では受傷後の褥瘡発生と関連する因子として入院時のFIMとVIが関連することが示された。入院時にFIM・VIが低い患者には術前からの体交や術後の離床を積極的に進める等を行い褥瘡発症の予防により注意する必要性が示唆された。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行った。また、データ収取・集計には個人が特定できないよう配慮して実施した。</p>

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