通所型サービスCの参加者に対する転倒予防と,本人の望む生活の継続が自宅訪問にて図れた一事例

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  • 原田 智史
    医療法人 石和温泉病院 リハビリテーション部 理学療法室
  • 寺井 智哲
    医療法人 石和温泉病院 リハビリテーション部 理学療法室

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 現在山梨県A市にて通所型サービスC (以下通所型C)に携わっている.従来の二次予防から関わっているが,総合事業に移行してから参加者の身体機能やADL能力が低下していると感じる.今回,自宅の浴室にて二回の転倒歴のある参加者への自宅訪問を行い,生活環境を整えた結果,転倒予防や本人が望む「物干場で洗濯物を干したい」という希望を叶えられた.通所型Cであるが住環境の評価や整備が必要な方には積極的に介入する必要性を感じたため報告する. </p><p>【症例紹介】</p><p> 症例は要支援2の認定を受けた80歳代の独居女性である.以前は車を運転し,日常生活も自立していたが,浴室での転倒による肋骨骨折を機に心身機能が低下したため通所型Cへの参加となる.基本チェックリストは運動とうつ項目に該当.初期評価の結果から身体的・精神・社会的フレイルを認める.初期評価後のカンファレンスにて自宅訪問の必要性が検討され,本人の同意を得て実施となった. </p><p>【経過】</p><p> 担当保健師,福祉用具事業者,理学療法士が自宅へ訪問し,生活動作を評価した.身体機能の低下は肋骨骨折を起因とした廃用症候群と考えられたため,通所型Cの参加や活動性の向上で改善は可能であると判断し,必要最低限の手すり等の設置を提案した.浴室には転倒時に自費で購入したグリップ式の手すりと滑り止めマットが設置済みであったため,動作確認後位置の修正を行った.本人より「今後も洗濯物を物干場に干したい」との希望があり動作確認をするが,物干場と自宅の間には深い溝があり,脚立を設置し渡っている状態であった.洗濯カゴを持っての移動は危険だと判断し代替案を提示したが,本人からの強い希望もあり,手すりを設置することとなった.住宅環境を整えた結果,浴室での転倒はなくなり,希望であった物干場で洗濯物を干しながら,以前同様の生活が可能となった. </p><p>【考察】</p><p> 総合事業や地域リハ活動支援事業などでリハ専門職が地域在住高齢者に関わる機会が増えてはいるが,需要に対して供給は不十分であると感じる.今回も自宅訪問をしなければ転倒の危険がある中での生活が継続されていた恐れがある.通所型Cでは身体機能が向上することは明らかであるが,生活機能が向上しなければ機能維持は困難である.そのためにも参加者の生活全体を評価してアプローチしていくことが求められており,リハ専門職の専門性を活かした自宅訪問を行なうことも大切である. </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 本報告はヘルシンキ宣言を遵守し,対象者には事前に研究の主旨と内容を書面および口頭で説明し,同意書に署名を得ている.また石和温泉病院倫理審査委員会の承認(承認番号 2023-001)を得て実施している.</p>

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