栃木刑務所における理学療法士としての実践報告

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  • 村中 大樹
    一般社団法人巨樹の会 新上三川病院 リハビリテーション科 栃木刑務所 地域連携科

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 近年、新受刑者のうち高齢者や有障害の割合が増加傾向にある。出所後の社会生活への適応能力の低下が再入の要因の一つと考 えられており、矯正処遇の充実が求められている。このような背景から栃木刑務所では、令和3年より理学療法士 (以下、PT)、作業療法士を非常勤雇用し女子施設地域連携事業を展開している。今回、刑務所における実践内容等について報告する。 </p><p>【方法】</p><p> 高齢や疾病等に起因する身体機能に問題がある被収容者が刑務官により選定され、対面による評価、自主訓練を中心としたプログラム立案、実施を行う。一連の指導では刑務官と介護福祉士が同伴し、個室や体育館などの環境で1回15分程度実施する。立案内容は介護福祉士にも申し送られ、PT不在時にも被収容者に対して指導がされる。 </p><p>【結果】</p><p> 令和3年7月から令和5年4月までに介入した対象者は12名。刑務官からの依頼目的としては、腰背部痛の軽減、ADL、歩行能力の維持、改善等であった。被収容者によりモチベーションの違いはあるが、比較的能動的な取り組みが伺えており、自主訓練の習慣化に至るケースも見受けられた。対象が高齢という事もあり、認知機能の影響から運動が覚えられず、介護福祉士の習慣的な指導が必要なケースもあった。 </p><p>【考察】</p><p> 限られた環境かつ、自主訓練が中心となるため医療機関等で提供されるリハビリテーションとは異なり、いわゆる地域での健康予防教室での指導ともいえる。PTの直接的介入は月4回程度となり、前述した事と併せ対象者の大きな変化には繋がりにくい事が現状として考えられる。入所時、退所時における介護度の変化や、再入率の変化等の検証ができていないため、取り組みの客観的な有用性までは本報告では提示できない。しかしながら、被収容者と日常的に関わっている刑務官や介護福祉士からは被収容者の歩容の改善や表情の変化、行動変容等ポジティブな意見が多く聞かれ、主観的ではあるがPTとしての介入意義を予防的観点からも強く感じている。取り組みとして2年にも満たないため、刑務官、PTともに内容について模索中であり、有用性についてより客観的な報告ができるよう今後も活動の継続を行っていく。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p> 栃木刑務所にて承認を得た。</p>

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