地域で活動できる姿勢推定ライブラリを基盤とした動作解析システムの開発

DOI
  • 井ノ上 真白
    信州大学大学院 医学系研究科保健学専攻理学・作業療法学分野理学療法学領域

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p> 動作を定量化する目的で臨床や研究では3次元モーションキャプチャ (3D-MC)が広く使用されているが,設置コストや測定コストが課題である.3D-MCの課題を克服した動作解析システムとして,OpenPoseをはじめとしたマーカーレスモーションキャプチャが注目されている.一方で、これらは3D-MCと比較して手軽に測定できる反面,精度が低くデータが扱いにくいという欠点がある.本研究の目的は,OpenPoseの臨床応用を目指し,手軽に動作解析できるアプリケーションを開発すること,信頼性の高いデータを出力するアルゴリズムを作成することとする. </p><p>【方法】</p><p> 総合的な身体機能を評価する目的で広く用いられている5回立ち上がりテスト (5STS)を健常大学生10名が2回ずつ実施した.その様子を3D-MCとスマートフォンで同時に撮影し,開発したアプリケーションで動作解析した.両計測条件で体幹・股関節 ・膝関節・足関節の関節角度を算出し,測定方法間の信頼性の指標としてMAE (平均絶対誤差)を求めた.また各起立時の各関節の角度変化量を算出し,Bland-Altman分析によって信頼性の指標であるMDC (最小可検変化量)およびICC (級内相関係数)を求めた. </p><p>【結果】</p><p> 各関節角度において系統誤差は認められず,MAE,MDCともに体幹角度においてそれぞれ3.6˚,5.7˚を示したが、足関節角度のMAEは13.6˚であった.信頼性の評価においては、体幹 ・股関節角度でそれぞれのICC(2,1)が0.904,0.901を示し.膝 ・足関節で0.746,0.602を示した. </p><p>【考察】</p><p> MAEは足関節角度を除き概ね先行研究と同様の結果が得られた.足関節角度のMAEが大きな値を示したのは,撮影時に足部に対する仰角が大きかったことに起因すると考える.撮影方向による結果への影響は,今後機械学習やAIの導入により部分的に補 正できる可能性がある.信頼性については、低速歩行を対象とした先行研究と比較して,STSの速い動作を対象とした本研究でも同程度の信頼性が得られた.また、解析用のアプリケーション開発は完了し、公開できる段階になっている。 </p><p>【結論】</p><p> 中等度以上の信頼性のデータを出力する動作解析システムの開発に成功した.信頼性には撮影環境が影響し,その影響を除く機械学習モデルやAIの開発が期待される. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>信州大学医学部生命科学・医学系研究倫理委員会の承認を得た (承認番号:5544).本研究への参加により被験者が被る不利益は数十分の時間的拘束に留まる.研究内容を説明し同意を得たうえでデータを測定した.</p>

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