加齢に伴う歩行能力低下に対して実行・継続可能性に着目したトレーニング設定が奏効した1症例

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抄録

<p>【目的】</p><p>高齢者の歩行能力低下に対して筋力トレーニング (以下筋トレ)の有効性が実証されている一方で、方法・内容の煩雑性、場所、時間的制約、動機付け、意欲が実行・継続への阻害因子となっている。 加齢変性に伴い改善効果が緩徐で長期間の継続が必要であるため、実行が容易かつ効果が高く、無理なく継続可能な方法論構築を目的に症例検証した。 </p><p>【症例紹介】</p><p>健常80歳代女性、健康増進意識が高く解放運動連鎖筋力強化法 (以下OKC)を1日30分12年間継続していた。 しかし加齢に伴い高齢者特有の歩容として頚部・体幹前傾と歩幅減少を呈し、特に最速歩行で増悪する事から安定限界面狭小による転倒リスクが予測された。 和式生活で坐位時は正座、歩行機会は買い物時の生活習慣であった。 </p><p>【方法】</p><p>日常生活活動 (以下ADL)内に筋トレを取り込む事を目 的に生活習慣から高頻度の姿勢、動作を抽出し実行場面に設定。閉鎖運動連鎖筋力強化法 (以下CKC)を用いて即時効果が得られる正座姿勢で踵‐坐骨間10㎝の座布団を使用し骨盤前傾誘導 120分、買い物時に上肢伸展方向への大振り歩行を30分2か月間継続。 開始に際して現状と即時効果を示した画像を供覧し問題認識と実行の意義理解を深めた。 5m歩行における快適、最速歩行速度、歩幅、歩行時の動画から編集ソフト「Brender」を用いて、大転子からの垂線と耳垂との角度を頚部・体幹前傾角と規定し、開始時と2か月後で比較し効果判定した。 </p><p>【結果】</p><p>開始時→2ヶ月後で5m歩行速度 快適0.97m/s→ 1.33m/s 最速1.18m/s→1.69m/s 歩幅 快適0.42m→0.50m 最速0.36m→0.55m 頚部・体幹前傾角度 快適6.7°→1.9°最速10.4°→3.2° 1日実行時間 30分→150分 </p><p>【考察】</p><p>骨盤前傾誘導の腸腰筋‐脊柱起立筋CKCで体幹安定性向上を図ると共に、歩幅拡大に寄与するとされる上肢大振り歩行を実行する事で自動的に負荷量増大下での下肢抗重力筋トレが可能になった。 即時効果が得られる方法は筋トレの有効性を示すと共に、患者は改善後の自身を視覚的、体感的にイメージ可能となり、それによる結果予期、効力予期が実行・継続への動機付けと意欲に繋がった。 OKCと比較し簡便で効率が高いとされるCKCをADL内高頻度動作で設定する事で、改善効率の高い筋トレが自然とADL内に取り込まれ習慣化された結果、無理なく長時間実行・継続可能になった事が短期間での歩行能力向上の要因であると考察する。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき、個人情報保護に十分に留意して実施し、対象者には研究内容を説明するとともに、文書で同意を得た。</p>

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