外来栄養指導患者のサルコペニアに影響する要因と理学療法介入の方向性

DOI
  • 大坪 尚典
    金沢市立病院 リハビリテーション室
  • 太田 由利
    金沢市立病院 栄養管理室
  • 淺井 仁
    金沢大学 医薬保健学系リハビリテーション科学領域理学療法学専攻

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p>超高齢化の進行に伴い,健康寿命延伸のためサルコペニア (SP)の予防が重要とされている.しかし,具体的な指導や介入方法は施設や対象により異なると考えられる.今回,外来栄養指導患者のSPに影響する要因を分析し,理学療法介入の方向性を検証した. </p><p>【方法】</p><p>2021年4月~2022年6月に管理栄養士が指導介入した外来患者219例,男性117例,女性102例,69.5±12.6歳を対 象とした.全例が併存疾患の経過観察のため通院中であり,うち9割がBarthel Index (BI) 100点,1割がBI 95~40点を示し,全例が質疑応答可能であった.SP群か否かを従属変数とする決定木分析(Chi-Squared Automatic Interaction Detection)を行い,共変量として年齢,性別,併存疾患,BMI,栄養指標 (GNRI), BI,生活習慣に関するアンケート (食欲,摂食量,飲酒,喫煙,睡眠時間,活動時間,運動習慣など)の結果を投入した (P< 0.05).なおSP群とは,アジア研究班の基準 (AWGS 2019)によりSPもしくは重度SPに分類された例と定義した. </p><p>【結果】</p><p>非SP群は155例 (70.8%),SP群は64例 (29.2%)とな り,第1層が年齢,第2層がBMIとBI,第3層が起立時間による決定木が成立した.非SP率は7段階に分類され,{69歳~80歳, BMI>20.9,立位生活時間>2時間}の組合せが非SP率の最大値96.8%を示した.以下,{68歳以下:非SP率94.5%},{ 69歳~80歳,BMI>20.9,立位生活時間≦2時間:65.4%}, {69歳~80歳,18.4<BMI≦20.9:52.6%},{81歳以上, BI=100点:34.4%},{69歳~80歳,BMI≦18.4:11.1%}, {81歳以上,BI≦95点:0%}となった.モデル的中率は,非 SP群が92.3%,SP群が62.5%を示した. </p><p>【考察】</p><p>SPに影響する要因は60代までは確認されず,70代以降に認められた.70代ではるい痩予防に対する栄養指導と十分な立位生活時間,すなわち外出や社会的活動を維持するための工夫が必要である.また,80代以上ではADLのわずかな低下でもSPのリスクを生じることが示された.BMIをやや高値に維持することは高齢者の健康寿命延伸に寄与するとされ,本研究もこれを支持している.しかし,加齢によるADL低下を80代以降に改善することは容易ではなく,さらに早い段階からの予防的理学療法介入が求められる. </p><p>【結語】</p><p>外来患者のSPを予防するには,加齢に伴う社会的活動量の低下と,それに続くADLの低下に対して予防的介入を図ることが望ましい. </p><p> 【倫理的配慮】</p><p>外来の栄養指導日に担当の管理栄養士が個別に 研究の説明を行い,書面にて同意を得られた患者のみを研究対象とした.また,自由意思によるオプトアウトを合せて説明した.患者データの個人情報は全て削除し,筆頭演者が個人所有するパーソナルコンピューター (PC)のみで解析と管理を行った. PCは筆頭演者専用のロッカーで保管し,施錠管理を厳にした.</p>

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