変形性膝関節症を有する高齢患者の座位行動パターンの記述疫学

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抄録

<p>【目的】</p><p> 介護予防推進に向けて高齢者の長時間の座位行動(座りすぎ)対策は重要である.座位行動は活動量計によって客観的評価が可能となり,総座位時間,1日覚醒時間に占める座位行動割合,座位行動中断回数(ブレイク数),30分以上継続する座位行動回数(バウト数),総座位時間に占める30分以上継続する座位時間割合(バウト割合)などのパターンが評価可能になった.高齢者の座りすぎの原因の1つに変形性膝関節症(膝OA)があげられ,膝痛により座位の長時間や頻繁化が懸念される.これまで高齢者の座位行動パターンを評価した研究は存在するが,膝OA高齢者の報告は少ない.そこで本研究は膝OA高齢者の座位行動パターンの記述疫学分析を行った. </p><p>【方法】</p><p> 本研究は2015年8~9月,2019年12月~2021年9月に単一施設の外来膝OA患者を対象にした介入研究のベースラインデータを統合した. 対象者は65歳以上,VAS30mm以上の膝痛が3カ月以上続き,認知機能低下がない者を採用した.座位行動は3軸加速度計Active style Pro HJA 350-ITで測定した.対象者には連続7日間の測定を依頼し,データ採用基準は1日装着時間が 10時間以上,4日間以上(休日1日を含む)とした.加速度計から 5つの座位行動パターン[1日あたり平均総座位時間(分/日), 装着時間に占める座位時間割合(座位割合:%),ブレイク数(回/総座位時間),バウト数(回/日),バウト割合(%)]および装着時間に占める中高強度身体活動割合(%)を算出した.また,性別,年齢,独居有無,BMI,疼痛期間,KL分類,両膝OA有無,膝痛強度(VAS),生活障害(JKOM),身体機能(SS-5)も調査した.解析は調査項目を2群にしたカテゴリカル変数を独立変数,座位行動パターンを従属変数とした一般化線形モデルで群間比較を行った.共変量は当該モデルの独立変数を除く調査項目,加速度計装着時間とした. </p><p>【結果】</p><p> 対象は55名(74.7±6.6歳),総座位時間543±134分/日,座位割合59.0±11.1%,ブレイク数6.6±2.2回/時間,バウト数4.7回/日,バウト割合44.5±12.9%であった.後期高齢者群は前期高齢者群と比べ総座位時間(p=0.03),座位割合(p=0.01),バウト数(p=0.01)が多く,ブレイク数(p=0.04)は少なかった.生活障害重症群は軽症群と比べ座位割合(p=0.04)が多く,低身体機能群は高機能群と比べ総座位時間(p=0.04),座位割合 (p=0.01)が多かった. </p><p>【結論】</p><p> 膝OA高齢者の座りすぎには,高年齢,生活障害の悪化,低身体機能が関連する. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究の実施にあたっては,筑波大学「体育系研究倫理委員会」の承認(承認番号:第体27-44)および早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理委員会」の承認(承認番号:2019-250)を得た.</p>

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