運動器疾患患者における初期評価による退院時の階段昇降可否要因の検討

DOI
  • 山田 亮佳
    医療法人社団 小金井リハビリテーション病院 リハビリテーション科
  • 清 弘明
    医療法人社団 小金井リハビリテーション病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 階段は多くの公共施設や公共交通機関、一般住宅に存在し、日常生活上避けて通ることが出来ないものとなっている。そのため、階段昇降の可否は高齢者の自宅退院において歩行の自立と並んで重要な目標の一つであると考える。入院時点で階段昇降の可否の予測が可能であれば、リハビリプログラムの立案や退院後の生活環境の提案が、より適切に行えると考えた。そこで本研究では当院に入院した運動器疾患患者の入院時の運動機能評価や診療情報から退院時の階段昇降獲得の可否を検討することを目的とした。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は2022年1月から2022年12月に当院に入院し、退院に至った運動器疾患の患者の中で、MMSE24点以上、65歳以上の患者129名 (男性28名、女性101名、平均年齢81.8歳)とした。階段昇降可否の定義としては、退院時のFIM (階段)の得点が6 点以上の場合を自立群、5点以下を非自立群とした。2群間における年齢、入院時FIM (トイレ動作、トイレ移乗、運動項目小計)、入院時Functional Balance Scale (以下FBS)を比較した。統計学的処理としてMann-WhitneyのU検定を行った。また、関連因子を求めるため、各群について階段昇降可否を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。有意水準は危険率1%未満とした。 </p><p>【結果】</p><p> 自立群は67名 (平均年齢79.7歳)、非自立群は62名 (平均年齢 84.0歳)であった。2群間の比較では年齢、FIM (トイレ動作、トイレ移乗、運動項目小計)、FBSに有意な差 (P<0.01)を認めた。階段昇降可否の関連因子としてはロジスティック回帰分析から入院時FBS (P<0.01)、入院時FIM運動項目小計 (P<0.01)が選択された。またFBS、FIM運動項目小計の階段昇降自立におけるカットオフ値をROC曲線から算出したところ、FBSは34点 (曲線下面積 0.778)、FIM運動項目小計は44点 (曲線下面積 0.821)であった。 </p><p>【考察】</p><p> 2群間において、今回比較を行った全ての項目で優位な差を認めた。その中でも階段昇降可否に影響を及ぼす入院時の評価として入院時のFBS、入院時のFIM運動項目小計が関連する事が示された。今回の結果により、入院時の評価から早期より階段昇降の獲得に関する予後の予測が可能となり、患者本人、家族に対して具体的かつ実現可能な目標の提示を行う一助になることが考えられる。また、入院早期から退院後の環境設定や、サービスの検討を行うことが可能となり、早期の退院に繋がると考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本調査はヘルシンキ宣言に基づいた規定に遵守し、個人が特定できないように匿名化しデータの取り扱いには十分注意した。</p>

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