急性脳卒中/TIA発症後自宅退院患者の3か月後の IPAQを過小評価する患者の特徴

DOI
  • 山下 遥
    国立循環器病研究センター 循環器リハビリテーション部
  • 太田 幸子
    国立循環器病研究センター 循環器リハビリテーション部
  • 西薗 博章
    国立循環器病研究センター 循環器リハビリテーション部
  • 横田 千晶
    国立循環器病研究センター 循環器リハビリテーション部

抄録

<p>【背景と目的】</p><p> 近年,急性期脳卒中治療の進歩により,自宅退院可能な患者は増加しており,社会復帰に向けた活動性の維持・向上は大きな課題である.このため身体活動性の評価は必須であり,主な評価法として,加速度計による測定と国際標準化身体活動質問票 (International Physical Activity Questionnaire;IPAQ)による評価がある.しかし,両者の相関は必ずしも高くはない.活動性の維持・向上の阻害要因を明らかにすべく,本研究ではまず,加速度計での測定値に比較し,IPAQが過小評価された群に着目し,この患者群の頻度と特徴を明らかにする. </p><p>【方法】</p><p> 2020年4月から2022年12月に急性脳卒中/一過性脳虚血発作 (TIA)にて当院に入院後,理学療法処方があった患者で,病前日常生活が自立し,直接自宅退院となった例のうち,3ヶ月後に身体活動性をIPAQとスズケン社製生活習慣記録機ライフコー ダGS/Me(LC)で評価しえた313例(男性205例,平均68歳)を対象とした.3か月後のLCでの運動量とIPAQの身体総活動量との差(kcal/day)の絶対値を求め,3分位 (T1-T3)に分けた.絶対値の大きい (両者の評価値の乖離が大きい)T3より,IPAQが過小評価 (IPAQ<LC)された例を同定し過小評価群とし,その他の通常群 (T1,T2)と比較した.調査項目は,退院時と3か月後の身体機能(Short Physical Performance Battery;SPPB,握力,6分間歩行試験;6MWT ),健康関連QOL(SF-36v2○R)の下位尺度 (norm-based scoring),認知機能(Mini mental state examination;MMSE)である. </p><p>【結果】</p><p> T3 (110例)の中で,過小評価群は10例であった.通常群 (203 例)と過小評価群では,年齢,性別, MMSEに有意差はなかった.過小評価群では通常群に比べ,退院時と3ヶ月後の握力 (退院時:31.6 vs 25.5 kg,3ヶ月後:35.2 vs 26.9 kg),6MWT (退院時:495.0 vs 457.2 m,3ヶ月後:543.5 vs 494.0 m)がいずれも高く,3ヶ月後のSF36下位尺度の心の健康 (退院時:57.1 vs 57.1 点,3ヶ月後:49.5 vs 57.1点)が低かった (p<0.050). </p><p>【考察】</p><p> 2つの評価が乖離していた例のうち,過小評価例は10%と低かったが,過小評価群は通常群に比べて,退院時,3ヶ月後いずれも身体機能が高いにもかかわらず,3ヶ月後の心の健康が有意に低かった.この結果は,自分の身体機能の過小評価が,活動性向上の阻害因子になりえる可能性を示していると考えられた. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>国立循環器病研究センター倫理委員会にて承認されている (M28-063-11).</p>

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