住民調査データに基づく事業改善の取り組み

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 地域住民が定期的に集まり多様な活動を行う通いの場は、介護予防・フレイル予防の柱である。しかし、住民調査に基づく事業の効果検証や事業改善の取り組みについての報告は非常に少ない。そこで本研究では、多時点で実施した住民調査のデータを用いて、通いの場の効果を検証するとともに、通いの場事業における課題について検討した事例を紹介する。 </p><p>【方法】</p><p> 調査対象地区は山梨県都留市である (人口29,971名,高齢化率 29.6%)。都留市では、「いーばしょ」という名称の住民主体 の通いの場が市内に35ヶ所ある。効果検証および通いの場不参加者の特徴を把握するため、市内の全ての自立高齢者を対象に 2016年・2018年・2019年・2022年に郵送調査を実施した。通いの場に月1回以上参加している者を参加者とし、①参加者と不参加者のフレイル発生頻度の比較、②不参加者の特徴 (基本属性、健康状態、健康行動、社会的要因)について検討した。 </p><p>【結果】</p><p> 2016年・2022年調査の両方に回答した3,705名のうち、9.4% が通いの場に月1回以上参加していた。通いの場の効果において、一般化推定方程式の結果、通いの場参加者の方が不参加者よりもフレイル発生リスクが20%低いことが示された (OR [95% CI], 0.80 [0.64, 0.99])。通いの場不参加者の特徴について、修正ポアソン回帰分析を実施した結果、身体不活動者、独居者、生活機能低下者は通いの場に参加しにくく、歩きやすい場所が多い地区に住む者、運動に適した公園や歩道が多い地区に住む者、多様な社会的ネットワークを持つ者では通いの場に参加しやすいことが示唆された。 </p><p>【考察】</p><p> 通いの場に参加している者ではフレイル発生リスクを低減でき る可能性が示唆された。しかし、参加者は全体の9.4%と低く、普及において課題があると考えられた。通いの場不参加者の特徴としては、心身機能低下者、通いの場に通うことが困難な者、他者とのつながりが希薄な者への支援が必要であると考えられた。これらの結果に基づき、都留市では、①移動支援事業の導入、②心身機能低下者対応マニュアルの作成、③他課連携により地域活動促進に取り組むこととなった。 </p><p>【結論】</p><p> 住民調査に基づく通いの場の効果評価および事業改善は、通いの場による介護予防効果を高めるとともに、運営主体である住民のモチベーション維持にもつながるため、行政および住民にとって大きな意義を持つと考えられる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>埼玉県立大学倫理員会の承認を得た。</p>

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