家庭用体組成計による筋量測定の結果は妥当か?

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p> 骨格筋量の測定には,放射線被曝のない生体インピーダンス法 (BIA)による計測も用いられる.しかし,機材が比較的高額なことも多く,筋量測定が難しいケースもあると推測される.そこで本研究では,比較的安価な家庭用体組成計が高齢者の筋量評価機器として代用可能であるかを検討するため,家庭用体組成計の筋量測定結果の妥当性を検証した. </p><p>【方法】</p><p> 地域在住高齢者93名 (平均年齢74.7±4.9歳,女性61名)を対象とした.家庭用体組成計としては部位別の筋量測定が可能な innerScan Dual (RD-800,TANITA)を用いた.また,基準となるBIAの測定機器としてInBody430 (InBody Japan)を用いた.両機器による筋量測定は,体水分量による誤差を最小限にするため間隔を空けずに連続して実施した.測定結果から四肢骨格筋量を算出し,ガイドライン (AWGS2019)のカットオフ値に準じて筋量低下の有無を判定した.また,測定した筋肉量の収束的妥当性を検証するために握力と下腿周径も測定した.両機器による測定結果の一致度は,級内相関係数 (ICC),Kappa係数, Bland-Altman分析にて分析した.また,測定した筋量と握力,下腿周径との関連性はPearsonの積率相関係数を用いて分析した. </p><p>【結果】</p><p> innerScanとInBody で 測 定 し た 四 肢 骨 格 筋 量 の ICC は 0.96 (95%CI=0.94:0.98)と高い一致度を示した.一方,筋量低 下がある対象者は,innerScanで12.9%,InBodyで36.6%となり, Kappa 係数は 0.3 (95%CI=0.1:0.5)と一致度は低かった.さらに,Bland-Altman 分析では,両機器の間に加算誤差と比例誤差が認められ,innerScanの四肢骨格筋量が平均0.68±0.73kg高く,また筋量が少ないほどinnerScanの筋量が大きくなることが示された.なお,両機器による四肢骨格筋量は,握力と下腿周径と相関係数 0.67から0.83の高い相関関係を認めた. </p><p>【考察】</p><p> 家庭用体組成計でも四肢骨格筋量を正確に測定可能であると考える.ただし,機器の測定結果には系統誤差がある.特に,筋量低下の境界域にある対象者では筋量を低く見積もっている可能性があり,誤差を考慮して判断する必要がある. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した (承認番号2018-008B-2).また全対象者に対して書面にて研究参加に関する同意を得た.</p>

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