慢性期病院におけるレンタルクッションのシステム導入について

DOI
  • 山田 乃里子
    公益社団法人 福岡医療団 たたらリハビリテーション病院 リハビリテーション技術部
  • 松下 恵
    公益社団法人 福岡医療団 たたらリハビリテーション病院 看護部

抄録

<p>【はじめに】</p><p>当院は在宅療養支援病院であり、重症度の高い患者も多く、ポジショニング設定はセラピストにとって重要な役割の一つである。良肢位保持は、拘縮や肺炎、褥瘡を予防し、患者のQOL向上に繋がると言える。しかし、病棟には適切なクッションが少なく、あり合わせのクッションやタオルでポジショニングを行なっていた。そのため、病棟スタッフにポジショニング方法が伝わりにくく難渋していた。そこで、2019年4月にクッションをレンタルできるシステムを導入した。クッション導入後4年が経過し、導入後のスタッフの意識変化、導入前後の褥瘡新規発生率、治癒率の変化についてまとめたので報告する。</p><p>【方法】</p><p>①当院の全病棟スタッフに対して、クッション導入後の患者のポジショニングに関するアンケート調査を行った。②クッション導入前の2018年度から導入後の2021年度までの褥瘡新規発生率、治癒率の差を比較検証した。</p><p>【結果】</p><p>アンケート結果は97%のスタッフがポジショニング等のケアがしやすくなったと回答した。褥瘡の新規発生率は 2018年度0.12%、2021年度0.12%と変化はみられなかった。治癒率は2018年度22%に対し、2020年度は32%と大きく改善した。</p><p>【結論】</p><p>当院の入院患者は近年少しずつ重症化が進んでおり、ポジショニングの需要は高く、レンタルシステム導入後クッションの使用数は右肩上がりに増加した。システム導入で、適切なクッションが必要時に患者に提供できるようになり、病棟スタッフやリハスタッフのアンケート調査では、97%のスタッフがポジショニングしやすくなったと変化を感じている。患者にとっても安定した姿勢保持がとれるようになったことで、よりよい療養環境を提供できるようになったと考える。患者の重症化は進んでいるが、褥瘡の新規発生率は2018年度と同値で、治癒率は大きく改善した。これらは、入院直後から適切にポジショニングが導入でき、最適な姿勢管理、創部が除圧できたことで治癒につながっているのだと考察する。しかし、治癒に繋がった一方で、クッションを入れるだけで適切に使用されていなかったり、病棟スタッフによってもポジショニングの必要性や目的の理解度に差が見られるため、有効なクッションの利用を浸透させ、適切な栄養管理や褥瘡処置など、それぞれの症例に合わせた他職種での取り組みを、もう少し意識する必要がある。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>倫理的配慮に基づき個人が特定できないように配慮した。</p>

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