座位姿勢による頚部伸筋の経時的筋硬度変化~ Shear wave elastographyを用いた計測~

DOI
  • 新田 麻美
    北海道医療大学病院 リハビリテーション室 北海道医療大学大学院 リハビリテーション科学研究科
  • 青木 光広
    北海道医療大学病院 リハビリテーション室 北海道医療大学大学院 リハビリテーション科学研究科
  • 沖野 久美子
    北海道医療大学大学院 リハビリテーション科学研究科 北海道医療大学 医療技術学部臨床検査学科
  • 山根 将弘
    北海道医療大学病院 リハビリテーション室
  • 片岡 義明
    北海道医療大学病院 リハビリテーション室

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 長時間の座位姿勢保持によるデスクワークは肩こりを発生させるリスクが高いと報告されている。近年,筋硬度を定量的に評価する試みとしてShear wave elastographyを用いた剪断波伝達速度(SWV: Shear Wave Velocity)の計測が行われている。しかし,これまでに長時間の座位姿勢保持によるSWVの経時的変化は計測されていない。本研究の目的は,肩こり症状のない健常成人女性が長時間座位保持を行った際の肩こり症状と頚部伸筋のSWVの経時的変化を明らかにすることである。 </p><p>【方法】</p><p> 対象は健常成人女性11例 (平均年齢43.4±14.7歳)である。肘 と前腕を机の外に配置して,90分間机上のノートパソコンのFとJキーに左右の示指をおいた座位姿勢を保持し,開始時から 30分おきに計4回,超音波診断装置 (Aplio 500, Canon, Tokyo)、 6cmリニアプローブ (PLT100BT5, Canon, Tokyo)を使用して僧帽筋上部線維,肩甲挙筋,大菱形筋,頭板状筋のSWVを計測した。同時に自覚的肩こり症状として6項目 (だるい,重い,張る,痛い,詰まった,押さえられる)のNumeric Rating Scale(NRS)評価を行った。統計解析には,SWV計測値とNRS値の経時的変化についてそれぞれ反復測定一元配置分散分析を行い,事後検定にBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> 僧帽筋上部線維でSWV値の経時的変化に主効果を認め,僧帽筋上部線維は0分(2.62±0.47m/s)と比較して60分後 (3.14± 0.43m/s)にSWVが有意に増加した (p<0.05)。NRS合計点の経時的変化に主効果を認め,0分と比較して全ての時間のNRS合計点が有意に増加した (p<0.05)。 </p><p>【考察】</p><p> ノートパソコンによるデスクワークを想定した60分以上の座位姿勢保持により僧帽筋上部線維のSWVは増加した。前腕近位部の支持が無く,上腕の重みで僧帽筋や肩甲挙筋が持続的に牽引されたことや,長時間の不動により筋の静脈還流が低下したことが関与したと推察される。 </p><p>【結論】</p><p> 長時間の座位姿勢保持により僧帽筋上部線維のSWVと肩こり症状が増加した。このことは就労時間中の姿勢や休憩時間のタイミングの提案等の労働衛生に関する指導の根拠となり,肩こり症状の予防的介入に貢献する可能性がある。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は北海道医療大学病院倫理委員会の承認 (承認番号:第2022_003号)を得た。研究内容を被験者に説明した後に書面で同意を得た。</p>

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