病院内職員の腰痛に関連する因子の検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>職場における労働者の腰痛は欠勤や生産性の低下など経済的視点から対策の重要性が認識されている。先行研究では、身体特性や生活習慣など腰痛のリスク因子に関する報告が散見されるが一貫した見解は得られていない。 本研究の目的は、腰痛に関するアンケート調査と身体機能評価 のデータを分析することで腰痛に関連する評価や傾向を見出し、腰痛の発生、悪化予防に繋がる運動療法を考える一助とすることである。</p><p>【方法】</p><p>対象は当院に勤務する職員230名とし、評価はアンケート調査 (回答数101件)にて行った。アンケート項目は基本情報 (年齢、性別、身長、体重、喫煙歴、職種)、腰痛の状態 (Roland-Morris Disability Questionnaire: RDQ)、心理面(Pain Catastrophizing Scale: PCS)、セルフチェックで行う柔軟性評価 3項目 (立位体前屈、椅子座位で片脚を組んで前屈、しゃがみ動作)とした。柔軟性評価は脊柱、股関節の可動性を反映したものを選定した。各項目柔軟性が高い程高得点とし、0~2点の3段階で評価した。 RDQの得点をカットオフ3点で陽性群と陰性群に分け、各柔軟 性評価の得点、基本情報について比較した。2群間の比較には Fisherの正確検定を用い、RDQとPCSの得点の関連性についてはPearsonの相関係数を用いた。それぞれ有意水準を5%とした。</p><p>【結果】</p><p>陽性群と陰性群との比較で、3つの柔軟性評価の得点に有意差は認めなかった。また、各基本情報においても有意差は認めなかった。RDQとPCSの得点には弱い正の相関を認めた (相関係数0.378、p<0.001)。</p><p>【考察】</p><p>各柔軟性評価における2群間の比較の結果から、柔軟性単独で 腰痛のリスクを評価することは難しいと言える。身体機能については、他の要素も検討することが必要であると考える。また、本研究の柔軟性評価は質的データであったが、方法の再考により量的データを抽出できれば、結果が異なる可能性も考えられる。 基本情報に関しては、年齢や喫煙歴等RDQの得点と関連が示されている項目においても有意差を認めなかった。病院職員という母集団の年齢層や性別割合が先行研究のものと異なり、影響を与えた可能性が推測される。 RDQとPCSの得点に正の相関を認めたことは先行研究を支持す る。破局的思考が恐怖回避思考を生み出し、日常生活動作に影響を与えるという考え方に基づくと、両方の得点が高いことは慢性腰痛のリスクが高い状態を示唆するのではないかと考える。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、JR仙台病院倫理委員会にて承認 (仙仙病第175号)を得た。対象者には研究内容、個人情報保護等について説明し、同意を得たうえで実施した。</p>

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