自宅系高齢者施設職員の心身状況の経時的変化について

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>第三次産業、特に保健衛生業における作業関連性筋骨格系障害の横断的な報告や運動介入効果による報告は散見されるが、運動介入なしでの縦断的な報告は意外と少ない。理学療法士による専門的な運動指導介入の重要性を認識するための基礎資料として自宅系高齢者施設に勤務する職員の心身状況について、運動介入なしでの1年間の経過観察を行ったので報告する。 </p><p>【方法】</p><p>A県B市の自宅系高齢者施設 (収容人数66名、入居者の平均介護度2.4))に勤務する職員35名にアンケート調査を実施 した。初回、半年後、1年後すべてに回答を得られた19名 (男性1名、女性18名、年齢48.8±10.9歳)を解析対象者とした。職種は介護福祉士10名、看護師3名、その他 (助手など)6名であった。アンケート調査の結果から、現在の業務遂行パフォーマンス (%)、日常業務の身体的負担度 (VAS)、運動習慣の有無、業務前・中・後の体操実施の有無、肩こり・腰痛・腰背部疲労 ・精神的ストレスの有無と程度 (NRS)について経時的に比較した。統計解析はRepeated-ANOVA、フリードマン検定、Fisherの直接確率法を使用し、有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p>身体的負担度 (初回:45.26±23.43、半年後:61.79 ±17.64、1年後:60.11±21.89、p=0.025)ならびに精神的ストレス (初回:2 (0-5)、半年後:4 (3-5)、1年後:6 (3-7.5)、 p=0.024)の程度の比較で有意差を認めた。その他の項目においては、独立性ならびに程度の比較において有意差は認められなかったが、腰痛の程度の比較で差がある傾向を示した (p=0.079)。 </p><p>【考察・結論】</p><p>今回対象の自宅系高齢者施設職員は、日常業務での身体的負担度と精神的ストレスの程度において、1年間の経過観察にて統計的に有意な負担増を示した。また、対象者の多くは運動習慣がほとんどなく、心身の障害に対しての対策も実施してなかったことから、この状況が継続することで、さらに心身の状況が悪化していくことが推察された。結果より、自宅系高齢者施設で勤務する職員に対して、理学療法士が積極的に関わり職員の身体への負担軽減への対策、運動指導を主体とした筋骨格系障害予防ならびにメンタルヘルス対策への取組を行うことが重要であると思われた。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に則り実施され、研究協力者には研究の目的や方法について十分に説明を行い、書面にて同意を得た。また、本研究は岡山医療専門職大学倫理審査委員会の承認を得て実施した (承認番号0033)。</p>

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