製造業における産業理学療法

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  • 佐藤 剛章
    長野保健医療大学 保健科学部 リハビリテーション学科理学療法学専攻

抄録

<p>産業保健分野において,理学療法士の価値や必要性はますま す高まっている.産業保健分野における理学療法士は,仕事関連の筋骨格系障害の減少,これらの損傷に関するコストの減少,プレゼンティーズム・アブセンティーズムの改善に対して重要な役割を果たすことができる.筋骨格系障害の中でも腰痛は発症率と再発率が非常に高く,多くの人々の社会生活に悪影響を与えている.腰痛は産業労働者全体で61.6%と有病率が高く,腰痛に起因する医療費の合計はアメリカでは,263億ドル,経済損失は日本では一人当たり年間28,742円と報告されている.そのため,腰痛による経済損失は大きな社会問題となっており,腰痛予防・対策を実施しながら雇用を継続していくことが極めて重要である. 産業労働現場では,重量物の取扱い,長時間の不良姿勢や繰り返し動作などが原因で,様々な身体症状が発生している.我々は,労働者の健康状態を把握し,運動指導やストレッチ,エルゴノミクスに配慮した作業環境の提案などを行い,労働者の健康管理に取り組んでいる.また,労働災害の予防にも取り組んでいる.産業労働現場では,事故や怪我のリスクが高く,後遺症が残る場合もある.労働災害のリスクを最小限に抑えるために,職場の安全管理の徹底や,従業員の安全意識向上のためのセミナーやトレーニングを実施している.さらに,従業員の健康状態や作業環境の改善点を把握するために,定期的なヒアリングやフィードバックを行っている. 以上のように,理学療法士として,産業保健分野において,労働者の健康管理,労働災害の予防など,多岐にわたる役割を果たしている.我々は,労働者の健康を維持することで,企業や地域の発展に貢献することが可能である. 本セッションでは,私が行っている産業保健分野における理学療法士としての活動を報告する.</p>

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