産業保健領域における理学療法士のニーズ調査

DOI
  • 藤本 昌央
    大和大学白鳳短期大学部 総合人間学科 リハビリテーション学専攻 日本産業理学療法研究会 職能委員会
  • 和中 秀行
    日本産業理学療法研究会 職能委員会 神戸労災病院 中央リハビリテーション部
  • 柘植 孝浩
    日本産業理学療法研究会 職能委員会 倉敷成人病センター リハビリテーション科
  • 川村 有希子
    日本産業理学療法研究会 職能委員会 株式会社三菱総合研究所 イノベーション・サービス開発本部

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 産業理学療法の普及を図るため、産業保健分野で働く者に対して理学療法士のニーズ調査を行った。 </p><p>【対象と方法】</p><p> 対象は産業保健に従事する者とした。調査方法はグーグルフォームを用いてWebアンケートを実施した。 アンケート内容は、理学療法士が産業保健活動に関わるニーズについて質問を行った。 さらに対象者が疾病や障害を持った労働者、または高年齢労働者への適切な業務の割り振りについてどの程度不安に感じているかについて5段階で質問を行った。これらの回答については Mann‒Whitney U testを用いて検定を行った。有意水準は5%とした。 </p><p>【結果】</p><p> 153名の対象者のうち有効回答人数は47名 (30.7%)であり、回 答者は看護師、保健師、衛生管理者、心理職、産業医であった。産業保健チームが理学療法士に求めるものとして、腰痛・肩こり予防と対策、転倒対策、姿勢・動作指導、高年齢労働者対策、運動器のリスク因子の評価・改善のニーズが多いことがわかった。 産業保健チームは運動機能に対する介入の必要性について93.6 %の回答者が必要と答えた。しかし、運動機能面に対する対策を全くしていないが10.6%、ほとんどしていないが25.5%、どちらともいえないは40.4%、少しできているは23.4%、充分にできているは0%であり、運動機能面の対策ができていない理由は何をすれば良いかわからないが52.9%であった。 産業保健チーム内で産業医や理学療法士、健康運動指導士など運動に関連する専門家に助言や援助を求めることができる者は 32%、いないまたはわからないが68%であった。さらに疾病や障害を抱えた労働者支援について、支援してくれる専門家が充実していると感じている者は12.8%、不足していると感じている者が42.6%であった。 これら運動機能面に関する助言する者がいる群といない群において、疾病や障害を有する労働者に対して仕事を割り振る際に不安を感じるかについては、有意な差を認めた。高年齢労働者に対する業務の割り振りには有意な差は認めなかった。 </p><p>【考察】</p><p> 本調査によって理学療法士が産業保健チームとして求められているものは腰痛・肩こりなどの職業病予防および対策であり、これらには、理学療法における姿勢や動作指導が援助として行える。さらに、理学療法士が産業保健チームに加わることで、運動機能面の不安を軽減できることが推察される。特に疾病、障害を有する労働者に対する援助が期待される。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>研究の趣旨、学会等で公表すること、匿名で個人情報は公表しないこと説明し、同意が得られた者を対象とした。</p>

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