腰痛を有する労働者における慢性化有無での身体組成・身体機能の比較検討

DOI
  • 澤野 純平
    医療法人社団 いずみ会 北星病院 リハビリテーション科
  • 川島 康洋
    医療法人社団 いずみ会 北星病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 腰痛は休業4日以上を要する全業務上疾病のうち約6割を占め,腰痛を有しながらの就労継続者は多い.腰痛は労働生産性や生活の質,失職・ 休職にも影響を及ぼし,労働における腰痛予防への対策が急務である.腰痛は最も慢性化しやすく,労働生産性に強く影響するため,労働者の慢性腰痛予防は重要課題の一つである .労働者における慢性腰痛化は,重量物取り扱いや働きがい等の作業,心理的因子が関与するが,身体面の特徴について報告は少ない.よって,本研究は有用な慢性腰痛予防対策の策定のため,腰痛を有する労働者における慢性化有無での身体組成・身体機能の違いを明らかにすることを目的とする. </p><p>【方法】</p><p> 対象は腰痛を有する製造業の男性労働者38名(平均37.2歳).方法は自記式質問調査,身体組成測定(InBody370),身体機能測定とした.質問調査は基本属性(年齢,身長),腰痛継続期間(発症3ヶ月 以上,未満).身体組成は体重,BMI,骨格筋指数(以下SMI),徐脂肪指数(以下FFMI),身体総蛋白質量(以下%MV),体重に対する体幹・ 下肢骨格筋量割合,体脂肪率.身体機能は立ち上がりテスト(村永の方法を参考)を用いて体重支持指数(以下WBI)の推定値を算出.群分けは腰痛継続期間3ヶ月以上を慢性腰痛群,未満を非慢性腰痛群とし,群間での各項目の比較は正規性を確認後 ,Mann-WhitneyのU検討を用いた.統計学的有意水準は5%とした </p><p>【結果】</p><p> 慢性腰痛群16名(慢性率42%).群間で基本属性に有意差を認めなかった.身体組成はSMI(p=0.0136 r=0.55)FFMI(p=0.0015 r=0.67)%MV(p=0.0187 r=0.53)体重に対する体幹筋量割合 (p=0.0098 r=0.57)下肢筋量割合(p=0.0008 r=0.70)で有意に慢性腰痛群で低値を示し,体脂肪率は慢性腰痛群で有意に高値を示した(p=0.0337 r=0.41).身体機能である推定WBIでは慢性腰痛群で有意に低値を示した(p=0.0238 r=0.51). </p><p>【考察】</p><p> 慢性腰痛労働者は非慢性腰痛労働者に比べ,身体組成ではSMI ・FFMI・%MVである全身筋肉量,体重に対する体幹・ 下肢の筋肉量割合が低値を示し,体脂肪率が高値であった.一方身体機能では,推定WBIが低値であり,全身筋力が低値であることが明らかとなった.以上より,慢性腰痛予防においては全身筋肉量(特に体幹・ 下肢),全身筋出力の向上や体脂肪率減少を目的とした運動ならびに栄養指導が重要となる可能性が示唆された. </p><p>【結論】</p><p> 労働者において身体機能・ 組成の測定や改善が慢性化予防へ繋がる可能性が示唆された. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施された。またヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に配慮し、対象者に口頭で説明し同意を得た。</p>

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