外反母趾に対する舟状骨パッドの有用性を労働前後で検討した一症例

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抄録

<p>【はじめに】</p><p> 外反母趾に対する足底板挿入の効果に関して,疼痛の軽減や足部アライメントの変化など様々な報告がなされている.その中でも労働時の効果判定を行った報告は少ない.今回,外反母趾であり,労働時に母趾の疼痛を訴える症例を担当したため報告する. </p><p>【症例紹介】</p><p> 対象は当院理学療法士スタッフで,23歳,女性,身長158cm,体重 55.3kg,BMI 22.2.足部は,両足外反母趾 (第1趾側角度20/20),左内側縦アーチ柔軟性低下 (Navicular drop test 右陰性,左陽性),疼痛は左右母趾周囲にあり,強さは時間帯や日毎に変動し,主に労働時に強くなるとのことであった. </p><p>【経過】</p><p> 荷重時の内側縦アーチの機能を補助し,母趾への負荷を軽減させる目的で,症例の両足のインソールに舟状骨パッドを挿入した.パッドはドイツEMSOLD社製舟状骨パッドを使用し,設置位置はパッドの近位を載距突起の直下,遠位を母趾中足骨頭の近位とした.パッドの効果を評価するため,まずパッドなしの状態で20日間,VASと疲労感VAS検査を勤務開始時と終了時に両足評価した.次にパッド挿入し20日間,同様の評価を実施した.そして勤務前後の変化を評価するため, 各日のVASと疲労感VASの,勤務開始時と終了時の差を算出した.さらにその値の20日間の平均値を,両足を合計して算出した.結果,勤務前後のVASの差の平均値は パッドなし0.47,パッドあり-0.29となり,疲労感VASの差の平均値はパッドなし0.02,パッドあり0.06となった.パッドなしとありで比較すると,VASはパッドありの方が有意に低かった (p<0.05).また,足部はパッド挿入20日時点で第1趾側角度の変化はなかったが,Navicular drop testは左が陰性へと変化していた. </p><p>【考察】</p><p> VASは勤務開始時と終了時の差で比較した場合,パッド挿入時の方が有意に値が低かった.このことから,本症例においてはパッド挿入により勤務中の母趾の疼痛の増悪を軽減できたと考えられる.要因としては,内側縦アーチの機能を舟状骨パッドが補助し,それが母趾にかかる負荷を軽減したということが考えられた .パッド挿入20日時点で左のNavicular drop testが陰性へと変化していたことからも,パッド挿入が内側縦アーチの剛性を高める効果があったと考えられた. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は社会福祉法人恩賜財団済生会宇都宮病院倫理委員会の承認のもと,人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に従い,個人情報の取り扱いには十分留意し検討を行った.また本研究における同意および同意撤回について ,人を対象とする生命科学・医科学研究に関する倫理指針および社会福祉法人恩師財団済生会宇都宮病院倫理委員会の倫理に従った.</p>

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