日本人宇宙飛行士健康管理運用における バイオメディカルエンジニアおよび生理的対策担当業務実施報告

DOI
  • 森 貴史
    有人宇宙システム株式会社 有人宇宙技術部
  • 山村 侑平
    有人宇宙システム株式会社 有人宇宙技術部
  • 神山 慶人
    有人宇宙システム株式会社 有人宇宙技術部

抄録

<p>【はじめに】</p><p>有人宇宙システム株式会社(Japan Manned Space Systems Corporation:JAMSS)は、日本人宇宙飛行士による国際宇宙ス テーション (International Space Station:ISS)への長期滞在開 始以降、宇宙航空研究開発機構 (Japan Aerospace Exploration Agency:JAXA)が行う健康管理運用を支援してきた。特に 2021年度からは、健康管理運用の6領域 (医学検査、栄養管理、運動・生理的対策、精神心理支援、放射線被ばく管理、宇宙食 ・生活用品関連)を取りまとめており、各専門性をもつビジネ スパートナーと協力体制を構築し、同運用の高度化及び効率化に寄与してきた。本報告では、当該運用を担う運用要員のうち、バイオメディカルエンジニア (Biomedical Engineer:BME)及び生理的対策担当に焦点を当て、各業務内容の概説と今後の展望について述べる。</p><p>【実施体制】</p><p>健康管理運用チームは、医師であるフライトサージャン (Flight Surgeon:FS)、BME、生理的対策担当、精神心理担当 など各専門性を有する「健康管理運用要員」で構成されている。現在、BMEは7名在籍し、全員がJAMSS所属である。生理的対策は、JAXA所属の生理的対策責任者 (医師)及び運動専門家 (理学療法士)各1名と、JAMSS所属の生理的対策担当者3名で構成される。後者全員は、BMEも兼務しており、各々、運動指導関連の民間資格を有し、内1名は理学療法士免許を有している。</p><p>【実施内容】</p><p>BMEは、国際調整やスケジュール管理、ISS搭乗中の宇宙飛行士によるプライベートカンファレンスの実施支援など、健康管理運用を包括的に支援している。生理的対策は、宇宙飛行士の体力測定・評価、運動処方作成・指導を行っており、ISS搭乗中は、宇宙環境下の生理的変化を加味した運動処方を提供することで、ミッション阻害要因の影響を最小限に留める手助けをし、帰還後は1G環境への再適応促進に向けた運動指導を行っている。</p><p>【今後の展望】</p><p>近年、ポストISSへ向け、地球低軌道宇宙ステーションの民間運用が期待されている。現在、JAMSSはFS以外の健康管理運用要員を有する一方で、生理的対策領域は民間要員のみでの運用が未達成である点が課題である。今後は、民間のみで完結する健康管理運用の構築に向け、理学療法領域の高度人材育成など、JAXAと民間企業の関係性だけではなく、産学官の連携が望まれる。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本業務は、個人情報保護および倫理的配慮に十分留意して実施した。</p>

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