肥満脳卒中患者に対して共有意思決定に焦点を置き運動指導を行った一事例

DOI
  • 松本 浩希
    地方独立行政法人 市立吹田市民病院 リハビリテーション科
  • 加納 一則
    地方独立行政法人 市立吹田市民病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 今回、就労世代の肥満脳卒中患者に対し、共有意思決定に焦点を置き運動指導を行い、運動習慣の変化を調査したため報告する。 </p><p>【症例紹介、方法】</p><p> 左被殻出血を呈した50代男性。X日に発症。X+16日に当院回 復期病棟へ転院した。既往に高血圧症、脂質異常症があり生活習慣は乱れていた。X+23日には麻痺は消失し、独歩が安定、 TUGは8.9秒となった。本症例は、BMI33、体重97.7㎏であり、就学児が2人、発症前はダブルワークを行っていた。退院後の疾病予防のためには減量及び生活習慣の見直しが必要であった。管理栄養士より目標摂取calは2200kcalで設定、運動は300kcal以上の消費を目指し、運動量を漸増した。また、SDM-Rehaを用いて共有意思決定を評価し、退院後の生活を見据えた運動指導を行った。 </p><p>【結果】</p><p> 評価はX+23日から1回/週の体重測定、1回/月の体組成測定、 X+75日からライフコーダ―を用いて1日の歩数測定を行い、 SDM-RehaはX+75日、X+135日に調査した。退院後、3ヶ月に1度、体重、運動習慣の変化を電話での聞き取りを行った。退院前 (X+149日)には体重86.1㎏、筋肉量は-0.6㎏、SMIは -0.4、体脂肪率は-5%となった。減量ペースは0.7±0.6%/週であった。SDM-Rehaは15点向上し、81点となった。歩数は平均 11057歩/日であった。退院後半年までは散歩程度の運動習慣は維持できたが、それ以降は定着しなかった。1年後、体重は 90kgまで増加した。 </p><p>【考察】</p><p> 本症例は、退院後半年までは運動習慣が維持し、1年後も体重の揺り戻しは3.9kgであった。これは、入院中に治療に関する合意形成がなされたことが一要素であったと考える。しかし、半年以降の運動習慣は定着しなかった。その理由は、ダブルワークが再開し、忙しさを理由にした自己弁護意識が高まったためであった。入院中における治療への患者参加の促進は自己管理能力を高める可能性があるが、退院後の状況変化に対応するまでには至らなかった。 </p><p>【結論】</p><p> 入院中の意思決定支援を進めると共に退院後の状況変化も踏まえた多角的な支援が必要であると考える。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本症例に対し、データの取り扱いについて書面にて説明し同意を得た。</p>

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