自立高齢者向け賃貸住宅入居者における健康行動の維持•向上効果

DOI
  • 伊藤 香織
    旭化成ホームズ株式会社 くらしノベーション研究所

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 高齢期の住まいには、主に住み慣れた自宅と介護施設が挙げられるが、その間の受け皿となる住まいは未だ少ない。本報は、自立高齢者向け賃貸住宅の居住者を対象とし、そこで提供される健康長寿を応援するサービスの効果を検証することを目的とする。 住宅会社A社が提供する自立高齢者向け賃貸住宅の主な特徴は、外出や買い物の利便性が高い立地を重視すること、自炊可能な 1~2LDKの広さを確保すること、設備による見守り・駆け 付けと人による月1回の定期生活相談を備えること、共用部大型モニターでの健康長寿コンテンツ配信などである。 </p><p>【方法】</p><p> 上記自立高齢者向け賃貸住宅の居住者に対して、アンケートで 半年間の追跡調査を行った。特に相談員と居住者の相互作用によって健康行動が維持・向上するかに着目した (調査時期2022年8月、2023年1月。両調査回答の有効回答数112件)。調査 内容は、生活の実態 (外出頻度、調理回数、友人との対面交流)、行動変容ステージなどである。また、相談員が定期面談で用いるオリジナル面談シートの活用状況も分析した。 </p><p>【結果】</p><p> 1.面談シートの活用状況分析から、全18項目中、運動「3.運動習慣」、食事「7.好きな食べ物、美味しかった物」、交流「 17.携帯やスマホの活用を楽しむ」、「16.今日のおしゃれポイント」など、居住者の日常生活や関心事を話題にしていることが分かった。 2.半年間の健康行動の総合的な変化を見ると、96.9%の居住者が、運動・食事・交流のいずれか1つ以上で、実行期以上の 「行動あり」となった。 3.健康行動変化の背景として、半年間の生活の実態を見る。運動に関係する「外出頻度」は、毎日1回以上の外出が活発化している (43.2%→57.6%)。食事は「調理頻度」が「1日2回以上」が増加したが (50.5%→65.0%)、「1日1回」が減少した (29.1%→18.4%)。交流は、家族以外の「友人・知人との対面での交流頻度」で「週4-5回以上」の頻回な交流が増えた (12.1%→21.2%)。 </p><p>【結論】</p><p> 半年間の追跡調査により、自立高齢者向け賃貸住宅居住者の健康行動が維持・向上するかを分析した結果、運動・食事・交流のいずれか1つ以上で健康行動が認められた。このような変化の背景には、相談員の面談を通した後押しに加え、健康行動を継続しやすい住環境も寄与すると考えられる。今後の課題は、さらに1年後、2年後と継続的な調査をすることである。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、対象者に研究目的や内容を十分に説明し、書面にて同意を得て実施した。</p>

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