複数の課題を抱え、心身が疲弊し、就労継続困難となった理学療法士の一例

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  • 宇野 勲
    おうちにかえろう。病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 医療従事者の中には、仕事を一人で背負い込んでしまい、精神的に追い込まれ、働き続けることが難しい状態に陥ってしまうことがある。今回、自らの許容範囲を超えて仕事を引き受けてしまったことで、心身ともに疲弊し、職場を離れざるを得なかった事例について報告する。 </p><p>【症例】</p><p> 34歳、男性。職業は理学療法士。臨床経験12年目。日々の業務前後だけでなく休日も返上して研修会や学会に参加して自己研鑽に努めていた。また、大学院修士課程にも通い、仕事と学業の両立を行なっていた。 </p><p>【経過】</p><p> 2021年4月、とある全国規模の学会の実行委員長を拝命する。 職場では、病棟のサブリーダーを拝命し、スタッフのタイムスケジュールや書類、データ管理などを行なっていた。また、 NST委員のコアメンバーとして、業務改善やデータ収集業務に も従事していた。同年8月頃より学会準備が始まり、仕事、学業、学会準備と複数のタスクを同時に進めることとなった。同年10月頃からは食事が減少していたった。同年12月に、ともに研究班の活動を行なっていた同僚が全員退職してしまい、院内での研究関連の仕事を一手に引き受けることになった。修士論文作成や学会準備も佳境となり、心身ともに疲弊していった。 2022年3月に修士課程を修了するが、同時期に職場にて次年度の病棟リーダー、NST委員会リーダー、研究班リーダーを拝命する。学会準備も忙しさを増し、この頃には食事量が激減し、食べても下痢をしてしまう状態だった。同年5月の検診では、半年間で体重が11kg減少し、中途覚醒、早朝覚醒といった睡眠障害も現れていた。検診結果を受けて産業医の診察を受け、精神科受診を勧められた。しかし、その頃には他人と話すことに対して強いストレスや拒否反応を示すようになっており、休日は身動きが取れず、精神科を受診することができない状態であった。その後、産業医や保健師の面談を定期的に受けていたが、状態は改善せず、同年9月をもって退職することとなった。 </p><p>【考察】</p><p> 本事例は、他者に自分が疲れていることや課題を抱え込み過ぎていることを相談できず、全て自分で背負い込んでしまっていた。結果として、心身ともに疲弊してしまい、就労の継続が困難となってしまった。複数の仕事を抱えているスタッフに対しては、過負荷になっていないか、相談できているかということを確認し、心身の疲弊を予防する必要がある。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本人に発表内容について説明し、同意を得た。</p>

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