がん登録の収集とその適切な管理、利活用について -患者への運動介入研究においてがん登録は活用できるか-

DOI
  • 梅沢 淳
    国立がん研究センター がん対策研究所
  • 街 勝憲
    法政大学 スポーツ研究センター 国立がん研究センター中央病院 乳腺外科

抄録

<p>がん登録とは、がんの患者数、罹患率、生存率、治療効果の把握など、がん対策の基礎となるデータを把握するために罹患や転帰を登録・把握、分析する仕組みである。我が国では1950年代より地域がん登録として収集され始め、2013年には「がん登録等の推進に関する法律」が成立し、収集項目などがより標準化された「全国がん登録」が2016年に開始された。がん対策を行う上で重要な指標となる他、研究や創薬への利活用も期待されるが、我が国では十分に進んでいない。本稿では、我が国のがん登録の現状を紹介しつつ、「がん患者への身体活動 /運動介入研究等において活用できるか」を考察する。 全国がん登録は、患者数や罹患率などを把握するために悉皆的に収集する仕組みである。氏名、性別、生年月日などの個人情報に加え、側性、原発部位、病理診断 (ICD-O-3)、進展度、死 亡日など主要な26項目について、国立がん研究センター (以下、 NCC)が厚生労働大臣の委託を受け収集している。ただし、詳細な治療情報や同一施設内での再発については収集されない。利用するためには専門家による審議委員会 (年4回)での承認が必要であり、2023年2月までに法17条による提供が7件、法21条による提供が30件であった。 院内がん登録は、当該施設でのがんの診断、治療、予後に関する情報を登録する仕組みである。がんの部位、進行の程度、診断や治療の方法など99項目に渡って詳細に収集されているが、施設外に出す際には匿名化される。NCCでは診療連携拠点病院など約850施設より提供を受け、全国規模の集計を行っており、 2023年5月より研究への提供も審査会 (年4回)での承認をもっ て可能となった。 がん患者への身体活動/運動介入研究等におけるがん登録の用途は①正確ながんの状態や治療法などによる層化、②重症化、再発、死亡等の予後情報に大別される。リンケージが前提となるので、個人情報による突合が不可欠である。これらを勘案すると、全国、院内ともに一長一短があり、研究者には取捨選択や、制度、別のスキームによる利活用が求められるのが現状である。いずれを利用するにも、研究計画に各がん登録の収集、利活用について記載し、対象者へ説明の上で同意を得ておくことが必須となる。また、がん情報サービスや経験者の声、事前相談などを活用しながら、研究計画を練ることが重要であると考えられる。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究は、がん登録に関して公開されている発表済み論文、書籍、Webサイトなどに加え、著者の経験則により論じた調査研究であり、本項に該当しない。</p>

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