PICS予防のリハビリテーション:呼吸不全とフレイル

DOI
  • 花田 匡利
    長崎大学病院 リハビリテーション部 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科理学療法学分野
  • 名倉 弘樹
    長崎大学病院 リハビリテーション部 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科理学療法学分野
  • 及川 真人
    長崎大学病院 リハビリテーション部 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科理学療法学分野
  • 竹内 里奈
    長崎大学病院 リハビリテーション部 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科理学療法学分野
  • 神津 玲
    長崎大学病院 リハビリテーション部 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科理学療法学分野

抄録

<p>集中治療の進歩により重症呼吸不全患者の救命率が向上する一方,当該患者は退院後も長期に渡って身体および認知機能,メンタルヘルスに障害をきたすことが明らかとなった.これを集中治療後症候群 (PICS)と言い,対象者の社会復帰に向けた,その予防と対策は大きな課題となっている. 重症呼吸不全患者では,特にPICSの合併は大きな問題であり,機能障害の長期的な影響は計り知れない.これに対して集中治療における早期リハビリテーションは不可欠な手段として認識され,標準的治療となっている.また,多職種によるチームでの実践が推奨され,診療報酬上も早期離床・リハビリテーション加算として診療報酬の対象となっている. PICSでは,安静臥床による不動に伴う廃用性の運動機能障害に ICU獲得性筋力低下 (ICU-AW)の影響が加わるため,重篤な身体 機能障害が惹起される.また,せん妄に起因する認知機能障害 の影響も重大である.これらの機能障害は予防が重要であり,現在までにPICS予防のための様々な取り組みが行われているが,決定的な方法はなく,ICU退室後に身体および認知機能障害の改善に難渋し,障害が遷延する症例も少なくない.したがって, ICUでの早期リハビリテーションに加えて,退室後のリハビリテーションやケアのあり方,充実も重要な課題であり,シームレスかつ個別化されたシステムの構築が求められる. 超高齢社会の到来に伴い,高齢の呼吸器疾患患者も増加しており,こうした患者が集中治療の対象になるとともに,呼吸器疾患の急性増悪によっても重症化するリスクも抱えている.リハビリテーションの対象となる本邦のPICS合併患者は諸外国より高齢であり,多疾患併存やフレイルに代表される低身体機能のために,PICS合併のリスクとともに,社会復帰自体が困難な症例も多い.PICSは患者だけでなく,その家族も介護等を強いられ就業もできず社会生活自体も困難な状況に陥る.さらにPICS自体の認知度の低さも障壁となっており,医療・福祉・行政などとの地域医療との連携を図り,家族も含めて長期的かつ具体的なフォローアップ体制が急務である. 本セッションでは,ICUからシームレスなリハビリテーションの考え方や実際について,当院での現状での取り組みや課題も含めて紹介させていただく予定である. </p><p>【倫理的配慮】</p><p>発表内容に関して使用するデータに関しては,ヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分留意し,演者の所属する機関の倫理委員会で承認された研究であり,対象者には説明と同意を得ている.</p>

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