シルバー人材センターの後期高齢者が安全に生きがい就労を継続するための3つの対策

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  • 森下 久美
    ダイヤ高齢社会研究財団 研究部 認知症介護研究・研修仙台センター 研究部

抄録

<p>シルバー人材センター(以下,SC)は,地域の60歳以上の高年 齢者に,就業をはじめとする活躍の機会を提供する組織である. SCでの就業は,主に家庭や企業,公共団体等から,請負または委任契約により仕事が受注され,それをSCに登録した高年齢者 (以下,会員)に提供される仕組みで成り立っている.設立から約50年が経過した現在,SCは全国1,339カ所の市区町村に展開する日本最大の高年齢者の就業組織となった.会員数は,約69万人にのぼり,その6割が生きがいの獲得や健康維持,仲間づくりを目的にSCの活動に参加している(全国シルバー人材センター事業協会,2022). 一方,近年,企業の雇用期間の延長を背景に,会員の高齢化が顕著である.2022年時点の会員の平均年齢は74歳であり,運動機能や認知機能等の機能的健康度に問題を抱える会員が一定数在籍していることも分かっている(Morishita,2023).こうした会員の幅広い年齢層や健康度,ニーズに応えるために,全国のSCでは,安全衛生教育の強化や多様な働き方が模索されている. ダイヤ高齢社会研究財団では,2006年より,市区町村のSC や,SCの全国組織である全国シルバー人材センター事業協会との共同研究等を行っている.本発表では,まず,埼玉県A市の会員4,000名を対象とした追跡調査および,全国のSCにおける就業時の重篤事故(死亡または半年以上の入院に至った事故)の事例調査等から,会員の健康上の課題とSCでの就業状況,重篤事故の要因を整理した.そこからは,後期高齢期のSC会員が,安全に生きがいを持って就業を続けるための対策として,①健康度のセルフチェック,②個人の安全対策を補填するサポート, ③身体的な負荷の少ない役割への転換の3点が重要であること が見えてきた.SCでの就業は,就業の形式や就業動機において,一般的な企業等での就業とは異なる点も多い.しかし今後企業等においても増加が見込まれる後期高齢者の就業について,SCは先駆的に対峙してきた組織であることから,今後の労働市場全体での,高齢者の雇用促進や現役継続におけるヒントになり得るだろう.</p><p>【倫理的配慮】</p><p>本発表に用いる研究データは,いずれも所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得ている.</p>

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