住民間の交流と援助希求行動を促すコミュニテ ィの空間構造特性  ~ 自殺希少地域 X 町の「路地」への着眼 ~

DOI
  • 岡 檀
    統計数理研究所 医療健康データ科学研究センター

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>演者は先行研究で、自殺希少地域では住民間のゆるやかな紐帯 が維持されていること、また、援助希求への抵抗感が小さいことを明らかにした。さらに、全国3,318市区町村に14種類の地 形と気候のデータを付与して解析し、住環境によって強められる行動様式や思考傾向との関連について考察した。本研究では、コミュニティの空間構造特性が住民間の交流と援助希求行動を促すという仮説を立て、自殺希少地域X町の「路地」に着目して行った研究について報告を行う。</p><p>【方法】</p><p>土木や都市計画の研究者の協力を得て、路地に関する実地調査を行い、地図会社との協働により新たな指標「路地存在率」を作製した。この路地存在率を解析に実装し、三重県旧市区町村ごとの標準化自殺死亡比との関係を検討した。</p><p>【結果】</p><p>三重県旧市区町村の路地存在率と標準化自殺死亡比との間に有意な負の相関が示された。海岸部の市町村のみ選択し、その他の地理特性 (可住地人口密度、可住地傾斜度、日照時間など)を加えて重回帰分析を行ったところ、路地存在率が選択された。</p><p>【考察】</p><p>居住空間に路地が多いと、住民間の短くとも連続的なコミュニケーションが生まれ、困りごとの“小出し”習慣化 (=援助希求行動)が促されると観察された。問題の早期開示と介入が進み、自殺リスクを抑制しているという仮説と矛盾しない結果が得られた。</p><p>【結論】</p><p>コンパクトで路地の入り組んだコミュニティは、高齢者であっても容易に徒歩で移動でき、また、ハブ (情報の集散)機能を持つ場所が点在していることから、隣人との交流や情報交換が自然に促されている。少子超高齢化社会における健康行動の促進を考える上で、住環境の空間構造特性は重要な要素のひとつであるとの結論を持つに至った。</p>

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