産官学連携による中高齢者を対象とした地域コホート研究̶垂水研究̶

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抄録

<p>【背景と研究フィールド】</p><p>垂水研究のフィールドとなる鹿児島 県垂水市は大隅半島の北西部に位置しており、養殖 (ブリ・カンパチ)、農業 (野菜・果物)、畜産 (豚)が盛んな地方都市である。人口は13,550人 (2021年6月1日時点の推計人口)、高齢化率は約42%と高齢化の進展が顕著であり、小中学校の統廃合も進み、少子化も大きな課題となっている。 </p><p>【取組概要】</p><p>垂水研究は、中高齢 (40歳以上)の市民を対象とした包括的な健康チェックのほか、健康チェックの結果報告会、 健康支援のための介入試験、市報での情報還元などで構成され、これらの取組は「たるみず元気プロジェクト」という名称で広く市民に周知している。垂水研究の健康チェックから得られたデータを基にして、健康寿命延伸のための事業や施策へ反映させていくことを目指している。垂水研究の中核的な研究事業内容は、毎年実施している40歳以上の市民を対象とした包括的な健康チェックである。健康チェックでは、医師による問診や一般的な健康状態 (服薬状況含む)に関する質問調査の他、心電図、動脈硬化、身体機能 (筋力、歩行など)、認知機能、身体組成、 口腔機能、栄養調査、血液検査、日常生活に関する調査など、 1300項目を超えるデータ変数を取得している。 </p><p>【大学・行政・地域基幹病院との協働】</p><p>垂水研究は、大学・行政・地域基幹病院との綿密な協働体制で実施している。医療専門職に関しては、医師、歯科医師、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、管理栄養士などの多職種が関わっており、専門の研究領域も高血圧内科、老年学、栄養学、運動学、バイオメカニクス (生体力学)、精神・心理学など多岐にわたる。大学院生や学部生が調査に参加し、教育的な支援体制としての貢献度も高い。また、地域企業も参画し、市民への周知のみならず、地元企業への周知も進んでおり、多方面で地域活性化の事業への発展が期待されている。 </p><p>【研究成果】</p><p>これまでに垂水研究で得られた学術的な成果は国際誌31編 (2023年4月現在)で公開されている。また、日本人高齢者の健康水準の特性と推移に関する総合的プラットフォームの形成を目的とした「長寿コホートの総合的研究 (ILSA-J)」 ( 事務局:国立長寿医療研究センター、研究代表:鈴木隆雄)に参画しており、日本人高齢者の老化の変容に関する統合的分析に寄与している。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本発表に関する研究は、鹿児島大学疫学研究等倫理委員会 (170351 疫-改10、200054疫)の承認を得て実施されている。</p>

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