呼吸サルコペニアの将来の健康アウトカムについて
抄録
<p>【はじめに】</p><p>我々は2019年に呼吸サルコペニアの概念を提案した(Kera, et al 2019)。その後,日本リハビリテーション栄養学会のワーキンググループ (Nagano, et al 2021)、日本呼吸理学療法学会をはじめとする,4学会合同のポジションペーパー (Sato, et al 2022)が出版され、呼吸サルコペニアへの学術的な関心が高まっているところである。そこで本OSでは、地域高齢者における呼吸サルコペニアに関する我々の研究について紹介する。 </p><p>【方法・結果】</p><p>呼吸サルコペニアの診断には簡便に測定が可能な最大呼気流速を用いる方法を提案してる。最大呼気流速は、サルコペニア、要介護状態、フレイルと関連が強く診断に用いることができる。 呼吸サルコペニアはサルコペニアとの関連が強いが、前駆状態としてサルコペニアを有するものが多く、地域高齢者においてはサルコペニアが呼吸サルコペニアに先行すると考えられた。呼吸サルコペニアについての重要な関心事項は将来の健康アウトカムとの関係、すなわち呼吸サルコペニアの発生は何らかの健康上の問題を引き起こすかである。いくつかの呼吸サルコペニアの診断方法で死亡をアウトカムとしたCox比例ハザード分析による生存曲線分析を行ったところ、サルコペニア+呼吸機能低下のモデルがもっとも死亡率が高かったものの、呼吸機能低下の程度の影響は小さかった。一方で、呼吸機能低下単独で診断した呼吸サルコペニアは死亡率と関連があったものの、共変量を調整すると関係性は極めて小さかった。 呼吸サルコペニアも虚弱の一様態であることから、身体機能制限の発生と呼吸サルコペニアとの関連を、死亡を競合リスクと定義してFine検定を行ったところ、立ち上がりの困難さの発生のみが関連していた。一方で、歩行速度、握力、骨格筋量の経時変化については、呼吸サルコペニアはベースライン値が低いものの、機能がより減少するという根拠は得られなかった。 以上のことから、呼吸サルコペニアは、①呼吸筋量の低下が概念に包含されているものの、実際にはまだ診断に利用する方法がほぼない、②呼吸筋機能低下は明らかに他の虚弱の状態と関連がある、③死亡とは弱い関係がある、④身体機能低下の発生との関係は弱い、が我々の結果である。 </p><p>【結論】</p><p>地域高齢者においては呼吸サルコペニアの影響は弱い と推察されるので、より虚弱グループを対象とした調査を行い、呼吸サルコペニアによる影響を注意深く評価する必要がある。 </p><p>【倫理的配慮】</p><p>本研究において実施した調査については、すべて東京都健康長寿医療センター研究所の研究倫理審査にて承認を得て実施した (H18, 2015, 28 2017)。また対象者には本研究参加に関して書面と口頭によるインフォームドコンセントを得た。</p>
収録刊行物
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- 日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
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日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 2.Suppl.No.1 (0), 99-99, 2024-03-31
日本予防理学療法学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390299673817623296
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- ISSN
- 27587983
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可