“Unspeakable” Enemy:
Bibliographic Information
- Other Title
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- 「口に出せない」敵:
- The Translation, Reception and Cultural Agenda of Maxine Hong Kingston’s <i>The Woman Warrior</i> in China
- 中国におけるマキシーン・ホン・キングストンの『女武者』の翻訳、受容および文化的意義
Abstract
<p> マキシーン・ホン・キングストンは、『女武者』(1976)において、ムーランを女性の復讐者として新たに想像することを通して、チャイナタウンの中国系アメリカ人の女性であることの意味について書いている。先行研究は『女武者』のジャンル、中国系アメリカ人のアイデンティティ、そして女性の主体性を考察したとはいえ、この回想録の翻訳はまだ研究されていない。『女勇士』(1998)という中国大陸最初の著作権のある中国語版に焦点を当てる本論文の目的は、原文のなかでキングストンがどのようにムーランを変容させたか、翻訳がどのように彼女のムーランを変えて中国への異文化の旅を可能にしたか、そしてポスト毛沢東時代の中国における『女武者』の翻訳の動機が何かを解明することにある。</p><p> 『女武者』と『女勇士』の比較を通して、本論文は以下の結論を提示する。省略、置換、そしてトランスリンガル言い換えの結果として、キングストンの原作においてムーランの敵であったはずの共産党について中国語版においては「口に出せな」くなり、しばしばフェミニズムの支持者へと変えられた。このような変更に応じて、共産党に復讐するキングストンのムーランはその支持者へと変わり、中国においてデビューできるようになった一方、その変更に共産党の言説によって構築されたムーランを脱構築する可能性も見られる。また、中国語版に特有の四つの要素はキングストンの中国性を強調するのに重要であり、文化的中国中心主義を中国の読者のなかに呼び起こす。このような心理的戦略は、アメリカを、数十年にわたって帝国主義と覇権主義を代表してきたイデオロギーの敵としてではなく、中国系移民を介して中国と文化的繋がりを共有する国として、中国の読者に再認識させるという役割を果たす。こうした心理的転換を引き起こす翻訳者あるいは文化的仲介者の文化的意義が、ポスト毛沢東時代の中国における『女武者』の翻訳の動機となっていたのである。</p>
Journal
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- HIKAKU BUNGAKU Journal of Comparative Literature
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HIKAKU BUNGAKU Journal of Comparative Literature 65 (0), 224-206, 2023-03-31
Japan Comparative Literature Association
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390299673818265856
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- ISSN
- 21896844
- 04408039
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
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- Abstract License Flag
- Disallowed