海外の日本語学習者における自己表現と他者理解

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  • 「意識」と「形式」の連動に着目して

抄録

<p>本発表では、日本国外の大学で日本語を学ぶ日本語学習者が、どのような形式を選択し会話を円滑に進めるための自己表現と他者理解をしているのか、またそれは日本語学習者のどのような場面の位置づけと待遇意識と連動しているのかを明らかにする。</p><p>本研究では、中国語母語話者であり、アメリカの大学で日本語を学んでいる上級レベルの日本語学習者2名と日本語教師である日本語母語話者2名を、それぞれ学習者と母語話者のペアにし、「日本語母語話者に質問する場面」と「雑談の場面」という設定された異なる2つの場面での会話を録音した。また、会話録音後一週間以内に、日本語学習者に対し、録音した会話を再生しながらインタビューを行った。インタビューの音声データはすべて文字起こしを行い、質的データ分析の手法である大谷(2019)のSCATを用いて分析した。</p><p>分析の結果、日本語学習者は、自己表現として、相手レベルと場レベルの細かい調整をしていることが明らかになった。日本語学習者は、相手を「(日本語の)先生」と位置づけた上で、相手レベルの調整として、デスマス形基調の選択や質問発話のみでの敬語使用をしていた。質問場面から雑談場面に移行した際には、場レベルの調整として、中途終了型発話の使用や敬語不使用の選択をしていた。また、この自己表現は、会話の相手に対する他者理解とも繋がっていた。具体的には、日本語教師の表情、あいづちによる積極的傾聴、間違いの不指摘によるスムーズな会話進行などを通して、日本語学習者は自分が「尊重されている」と感じており、それが自己表現に繋がっていたことがわかった。</p><p>さらに、質問場面においては、実際の形式からはわからない場面の位置づけと待遇意識との連動が明らかになった。日本語学習者は、質問場面において、形式の段階での敬語使用の回避をしており、実際の会話ではほとんど敬語使用は見られなかった。しかし、学習者Aは、質問内容との連動による質問場面の位置づけ、学習者Bは、質問者という立場との連動による質問場面の位置づけにより、待遇意識の段階では敬語使用を選択しようという意思があったことがわかった。このことから、異なる場面での同一の相手との会話において、日本語学習者は細かい相手レベルと場レベルの調整をしており、実際の形式からはわからない場面の位置づけと待遇意識との連動があることが明らかになった。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673818813824
  • DOI
    10.32252/tcg.21.0_101
  • ISSN
    24344680
    13488481
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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