日本語学習者の内省と他者の視点から生じた待遇意識の変容に関する考察

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  • 学習者の待遇意識を明らかにするための基礎研究の方法

抄録

<p>待遇意識は、蒲谷(2013)において、「人間関係の位置づけをした上で,それをコミュニケーション主体自身がどう捉え,どのように待遇コミュニケーションにつなげようとするかという意識である」(p.37)と定義されており、待遇コミュニケーションを考えるための重要な枠組みの一つとなる。これまで、第三者の視点を入れて意識調査を行う必要性が指摘されているが、より有効な方法についてまだ十分に論じられていない。本研究では、中国人上級日本語学習者が、接触場面で依頼を行った際に生じた「失敗感」に関する事例を採り上げ、以下の2つの研究課題を明らかにした。①:「失敗感」を持った学習者(以下:「経験者」)は、接触場面で依頼を行う際に「失敗感」が生じた経験の後、自らの待遇意識がどのように変容したのか。②:「経験者」は、その経験に対する他者(以下:「他者」)の考えを知った後に、自らの待遇意識がどのように変容したのか。</p><p>調査の流れは、以下のようになる。調査①:「経験者」4人(A、B、C、D)にインタビュー調査を行った。事例の詳細、及び、事例を経験し、独自の内省を経た後の待遇意識を尋ねた。「経験者」に内容を再度確認した後、事例を文章化した。調査②:文章を通し、経験の内容を「他者」(学習者、母語話者)に伝え、事例に対する「他者」の考えをインタビューで尋ねた。調査③:「他者」(学習者、母語話者)の考えを「経験者」に伝え、「経験者」の待遇意識を尋ねた。なお、より明確な意識を聞き出すために、インタビュー調査は、協力者の母語で行われた。分析では、研究課題に沿って各事例の「経験者」の意識をカテゴリー化した。その後、各カテゴリー間の関係を検討し、文章化した。</p><p>分析を通し、以下の結論が得られた。①「経験者」は、内省を通し、コミュニケーションに対する理解を深めることができるが、限界があり、ネガティブな感情も生じることがある。②「経験者」は、「他者」の考え方を知ることを通して、経験したコミュニケーションに対する理解を深めつつ、落ち込む気持ちからも解放されることができる。③学習者の待遇意識を聞き出し、深める際に、母語と日本語の通訳を調査に採り入れる方法は有効である。こうした方法は、今後の日本語教育の実践での応用が期待されている。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299673818814592
  • DOI
    10.32252/tcg.21.0_102
  • ISSN
    24344680
    13488481
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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