中国語話者の依頼メール文に見る待遇表現の実態と指導による変化

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  • 件名・宛名・書き出しの観点から

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<p>本稿は、海外の大学で日本語学習者の作文の収集を行うW-CoLeJaプロジェクトの一環として、中国国内の大学で収集を行ったメール文の分析結果を報告する。メール文の調査は2023年春に二つのクラス、計47名にたいして実施されたもので、学習者はメール文を事前課題として書いたあと、そのメールにかんする授業を受講し、事後の書き直しを行っている。調査ではメールによる一連のやりとりが想定され、日本にいる講師への講演の依頼、講演受諾後の講演日時の調整、講演終了後のお礼メールの送付という三つの課題に分かれているが、本稿は、その最初の課題である講演依頼のメールを、件名・宛名・書き出しという三つの観点から分析したものである。</p><p>分析の結果、事前課題のメールでは中国語や中国文化の影響を受けた誤りが多く見られた。件名では、「講演」のかわりに「講座」が、「お願い」のかわりに「誘い」「招待」「案内」などが使われて書き手の依頼意図が伝わりにくくなったほか、「~のメール」といった無駄な要素がつくもの、「講演の誘う」のような名詞化がうまくいかないものなどが見られた。また、宛名では、「尊敬する」を宛名のまえに、「:」のような記号を宛名のあとにつけるもののほか、宛名自体がないもの、所属がないもの、名字のみのもの、「先生」ではなく「教授」「様」「さん」をつけるものなど、誤りとは言いがたいが、受け手に違和感を与えるものが見られた。さらに、書き出しでは、「こんにちは」「お元気ですか」といった挨拶におけるあらたまりの不足や、名乗るさいに所属先だけで済ませたり「~と申します」を使えなかったりするなどの敬意の不足が見られた。こうした困難点は、授業指導のなかで大きく改善されたが、一方で、メール文自体の多様性が損なわれ、型にはまったメールになるという弊害も見られた。今後は、そうした教室指導の長所と短所を踏まえた指導法の提案が求められる。</p>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390299673818816256
  • DOI
    10.32252/tcg.21.0_66
  • ISSN
    24344680
    13488481
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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