「死にたい」と言える社会——自殺のスティグマを超えて——

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タイトル別名
  • Society People Can Express Their Suicidal Feelings: Eliminating Stigma from Suicide

抄録

<p>本稿では、第一に、自殺予防NPOのボランティア相談員への聞き取りから、「死にたさ」が放たれる空間とはどのようなものか、また、誰かの「死にたさ」とともにあることが他者の理解不能性にもとづく共感から生じていることについて記述している。</p><p>第二に、E. デュルケームの自殺論における人格崇拝に関する記述を踏まえ、自殺の忌避が、「人格と個人の尊重」を至上の価値とする近代社会の基本的枠組みから生じるものであることを示す。道徳規範はそれを遵守しない人を排除する性質を持つため、個人の人格や人命の尊重という規範を尊重しないかのように見える自殺(者)も、社会から排除される。そのことは「死にたさ」をめぐる「感情規則」(A. R. ホックシールド)や「儀礼的無関心」(E. ゴフマン)にも表れている。</p><p>第三に、近年の脱医療化されつつある自殺対策において、自殺数と自殺率の削減に関する数値目標や費用対効果が問われるようになる中、「ただ、聴く」ことの資金難が加速している点について述べる。上記3つの論点をふまえ、人命や人権や個人を最大限に尊重しつつ、「死にたさ」を抱えて生きることを否定しない社会はいかにして可能であるのか、社会制度と社会規範双方から考察する。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299705004011776
  • DOI
    10.18918/jshms.33.2_39
  • ISSN
    21898642
    13430203
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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