2022-2023年に能登地方で経験したタカサゴキララマダニ刺症の5例

書誌事項

タイトル別名
  • Five Cases of Amblyomma testudinarium Tick Bites in Noto Peninsula, Ishikawa, Japan, 2022-3

抄録

石川県能登地方において,従来報告がなかったタカサゴキララマダニAmblyomma testudinariumによる刺症例を5例経験した。患者は男性1名,女性4名,年齢は65歳から86歳で,いずれも沿岸の集落に居住していた。初診は2022年または2023年の5月または6月で,いずれも自宅周囲の草刈りや農作業ののちに発症していた。居住地周囲では頻繁にイノシシが目撃されていた。4例は単発例であり,1例は2匹のマダニによる刺症例であったが,そのうち1匹のマダニは種レベルの同定はできなかった。病変の分布は露出部2例,非露出部3例であり,全例で刺入部の周囲に浮腫性紅斑が認められた。2例はワセリン法によって皮膚表面のマダニの除去を試みたが,2例とも除去できなかった。皮膚表面にマダニが付着した状態の2例を含め全例で4mmまたは5mmのパンチ生検用トレパンによる刺入部の切除を行った。5例とも切除後1週間で治癒した。3例ではミノサイクリンを3ないし7日間使用した。回収したタカサゴキララマダニ5個体 (全て若虫) についてRickettsia tamuraeの有無をPCRで検索したが,いずれも陰性であった。能登地方へのタカサゴキララマダニ刺症の拡散はイノシシの生息域の拡大にともなうと考えられ,今後もこの地域での患者の発生が懸念される。

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