(エントリー)石鎚コールドロンに産する溶結凝灰岩と花崗岩に含まれるメルト包有物の組成解析

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  • (entry) Analysis of melt inclusion in zircon from welded tuff and granitoids from the Ishizuchi Cauldron

抄録

<p>1,はじめに 石鎚コールドロンは、愛媛県久万高原町に位置する直径7~8kmの大きさを持つ火山深成複合岩体である。当岩体は、中期中新世の火成活動により西南日本外帯に形成したカルデラの一つであり、地下深部のマグマが地上に噴出したことで、地表の地盤が陥没して形成されたと考えられている。吉田ほか(1993)は、火山岩類と深成岩類の全岩化学組成の比較をおこない、両者が類似していることから一連のマグマから派生したものと考えた。また、溶結凝灰岩中の本質レンズと花崗岩類の全岩化学組成をQz-Or-Ab-H₂O系相平衡図に投影し、マグマ溜まりの深度を地下6~8km前後と推定している。本研究では、岩石記載や全岩化学組成の検討に加えて、新たにジルコンに含まれるメルト包有物に着目し、溶結凝灰岩と花崗岩のメルト組成を解析すると共に、その組成から当岩体のマグマ固結時の圧力条件を検討した。2,研究手法 野外調査では石鎚コールドロン内で見られる天狗岳溶結凝灰岩と坂瀬川斑状花崗閃緑岩(吉田ほか、1993)について産状観察と試料採集をおこなった。室内実験では、薄片作成、XRFを用いた全岩化学組成分析をおこなった。また、Taniwaki et al. (2023)に従い、ジルコンメルト包有物の均質化実験と、SEM-EDSを用いたメルト包有物の組成の分析を行った。3,結果 薄片観察から、溶結凝灰岩は石英、斜長石、直方輝石、単斜輝石が主成分鉱物として見られ、ジルコンを副成分鉱物として含む。ジルコンは自形を呈しており主成分鉱物の縁辺に認められた。花崗岩は石英、黒雲母、斜長石、カリ長石で構成されており、ジルコンを副成分鉱物として含む。ジルコンは自形を呈しており主成分鉱物の粒間に認められた。全岩化学組成では、溶結凝灰岩と花崗岩類のSiO₂含有量はそれぞれ65.9~69.4 wt%と65.7∼75.5 wt%であった。一方、EDS分析による溶結凝灰岩と花崗岩中のジルコンメルト包有物のSiO₂含有量は、それぞれ72.4∼74.5 wt%と75.5~77.0 wt%であった。4,考察  ハーカー図において、ジルコン中のメルト包有物のSiO₂含有量は、溶結凝灰岩と花崗岩の両者ともにジルコンを抽出した試料の全岩化学組成(溶結凝灰岩:65.3 wt% SiO₂、花崗岩:66.7 wt%)より高い。従って、ジルコンは結晶成長時に比較的分化したメルトを包有して形成したと考えられる。これは、偏光顕微鏡観察からジルコンが主成分鉱物の縁辺や粒間に存在している事と調和的である。さらに、圧力検討のために花崗岩中のジルコンメルト包有物組成について Rhyolite-MELTS地質圧力計(Gualda et al. 2014)を用いた圧力検討を行った。その結果、86∼195MPa(N=6)の圧力が得られた。<引用文献> Gualda et al. (2014) Contrib Mineral Petrol,168,1-16. Taniwaki et al (2023) Lithos,454-455, 107260. 吉田ほか(1993) 地質学論集, 42, 297-349.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299760188607232
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_383
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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