弥生石器,高槻型石斧の岩石学的特徴

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タイトル別名
  • Petrological characteristics of the Takatsuki-type stone axes from the Kifune Shrine, Kitakyushu City

抄録

<p>北部九州に広く流通した弥生石器には,今山系両刃石斧(武末,2001),層灰岩製片刃石斧,立岩系石庖丁(武末,2001)がある(森,2018).今山系両刃石斧は,福岡市西区の今山に露出する玄武岩が石材として採取・加工され,主に九州の北西部を中心に流通している.これに対し,北東部においては,北九州市八幡東区の高槻遺跡を中心に安山岩質の石材の加工が行われ,石斧として流通し(土屋,2004など),高槻型石斧と呼ばれている.今山系両刃石斧は,全岩化学分析(主成分・微量成分元素,希土類元素)などによって,大部分が今山産であるが,一部他地域の玄武岩が含まれていることが明らかになっている(足立ほか,2015).したがって,石材の産地同定や流通経路の検討には,石材の地球科学的分析が有効である.今回,北九州市小倉南区の貴船神社で表層採取した高槻型石斧5資料の化学分析の機会を得た.本報告では,それらの岩石学的特徴を報告する.石斧は,変質安山岩(4資料)と細粒の直方輝石-普通角閃石-黒雲母トーナル岩(1資料)からなる.いずれも風化のため,表面は黒色〜暗灰色を呈し,ざらついている.変質安山岩のSiO2含有量は,53.0〜53.8 wt.%で,細粒トーナル岩のSiO2含有量は58.5 wt.%である.変質安山岩は,高いMgO(8.1〜9.9 wt%),Cr(495〜562 ppm)およびNi(248〜291 ppm)含有量を示し,FeO*/MgOは0.70〜0.80である.この組成は,高Mg安山岩マグマに由来する香春花崗閃緑岩牛斬山岩体の斑状細粒閃緑岩(江島ほか,2019)に類似する.C1コンドライトで規格化した石斧の希土類元素パターンは軽希土類元素に富み,重希土類元素に乏しい.パターンは類似するが,細粒トーナル岩の方が変質安山岩より希土類元素含有量が高い.今回分析した高槻型石斧は,変質安山岩と細粒トーナル岩からなる.このことは,佐藤(2017)などですでに指摘されているように,高槻型石斧の石材の多様性を示唆する.文献足立達朗ほか,2015,日本文化財科学会第32回大会研究発表要旨集,236-237.江島圭祐ほか,2019,地質学雑誌,125,237-253.森 貴教,2018,九州大学人文学叢書13,九州大学出版会,238p.武末純一,2001,筑紫野市史 資料編(上)考古資料,528-555.佐藤由紀男,2017,岩手大学文化論叢,9,83-93.土屋みずほ,2004,考古学研究,50,34-54.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299760188608768
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2023.0_385
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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