Analysis of geological dependence of occurrence frequency of landslide using structuring seamless geological map v2
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- Miyazaki Kazuhiro
- Geological Survey of Japan
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- Abe Tomoya
- Geological Survey of Japan
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- Mizuochi Hiroki
- Geological Survey of Japan
Bibliographic Information
- Other Title
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- 構造化したシームレス地質図V2を用いた地すべり発生頻度の地質依存性評価
Description
<p>凡例を構造化したシームレス地質図V2*1(以下,シームレス)を用いて地すべり発生面積分率とサイズ分布の地質依存性の解析を行った.以下では,地すべりをそのサイズ・速度等を問わず広義の斜面崩壊の意味で使用する.今回対象とした地域とデータは,九州北西部佐世保市を中心とした南北及び南北約100キロの矩形領域の比較的規模の大きな地すべり移動体*2と,北部九州で近年の豪雨により形成された比較的規模の小さな地すべり崩壊域面積(以下,移動体面積と同一として扱う)である.前者は後者にくらべ十分長い時間内に累積して形成されている. 地質図の凡例を単一の変数とした場合,その値は離散的となる.シームレスの凡例はそのままでは,約2000の離散値を持っている.この凡例を,年代(地層岩石ができた年代),岩石(岩石の種類),岩相(地層岩石の形成環境)の3つの変数に分解し構造化した.そうすることで,それぞれの変数が取り得る離散値の数は高々数10と大幅に減じることができる.すなわち,地質と地すべり地形発達の因果関係の見通しを良くすることができる. 解析では,地質図ポリゴン,地すべり移動体ポリゴン(小規模な地すべりの場合は,崩壊領域のポリゴン),及び両者の交差を計算し移動体ポリゴンに各変数の離散値を割り振った.各離散値iごとに,移動体ポリゴンの総面積Ai,地質ポリゴンの総面積Giを集計した.ある離散値iに対し,Fi = Ai/Giはそのiに対して地すべり移動体がどの程度発達するかを表す.北西九州でFiが高かったのは,年代離散値では前期漸新世から後期中新世前期,岩石離散値では砂岩・泥岩・互層,玄武岩,岩相離散値では非海成層,汽水成層ないし海成・非海成混合層であった.これらは,いわいる北松型地滑り地域に分布する佐世保層群や北松浦玄武岩に相当する.それ以外では.西彼杵半島の蛇紋岩と泥質片岩でやや高かった. 地すべり発生頻度と発生規模を見積もる上で,地すべりサイズ分布を求めることが有益である.そこで,各変数の離散値iごとに集計した地すべり移動体のサイズ(面積s)分布を求めた.面積sの累積分布Hi(s)を両対数プロットすると,sの大きなところで直線になるものと,だらだらと減少する2つのタイプが求められた.前者はべき分布に,後者は対数正規分布にフィッティングできる.非線形最小二乗法でのフィッティングにより,べき分布ではべき指数-bが,対数正規分布では平均値と標準偏差が求まる.離散値ごとにサイズ分布の特徴を見ると,蛇紋岩,花崗閃緑岩,花崗岩,泥質片岩では,べき分布を示し,b = 1.0前後の値を示した.一方,北松地滑り地域に分布する砂岩・泥岩・互層,玄武岩では,対数正規分布を示した. 近年に発生した1953年西日本水害(門司),1982年長崎豪雨(長崎),2017年九州北部豪雨(朝倉)の3つの豪雨災害に伴う規模の小さな地すべりに対しても同様の解析を行った.白亜紀堆積岩地域(門司*3),新生代火山岩地域(長崎*4),白亜紀花崗岩・三畳紀〜前期ジュラ紀高圧型変成岩(朝倉*5)では,いずれもべき型を示し,前二者はb = 1.5〜1.8と比較的大きな値を示した.ただし,朝倉では,b = 1.2で,前述の規模の大きな地すべりで離散値i =深成岩及び変成岩で求められたb値に近い値となった.両者では,地すべりのサイズに大きな隔たりがあるが,背後にある形成プロセスには共通点があるのかも知れない.一方,カルデラを形成する活火山である阿蘇地域の小規模地すべり*6は,対数正規型のサイズ分布を示した. サイズ分布がべき分布になる現象は自然界によく認められる.そのような現象では,系が自己組織化臨界状態(SOC)になっているのが特徴である.地すべりについても,系がSOCになっていれば,今後発生する地すべりもべき分布に従い発生すると予想できる.すなわち,異なる地質離散値ごとに今後の地すべり発生に関して以下のリスク評価が行える.べき分布のb値が大きい地域では,相対的に規模の小さな地すべりが多発する傾向が強い.一方で,b値が小さい地域では,発頻度は低いが,相対的に規模の大きな地すべりが発生する傾向が強く,ひとたび発生すれば,甚大な被害が発生するリスクが高い.このように,地すべりの発生頻度・規模と地質との関係を明らかにしていくことは,地すべりのリスク評価において重要であると思われる. 引用文献 *1産総研(2022)シームレス地質図v2;*2防災科研(2014)地すべり地形分布図;*3土木学会西部支部(1957)昭和28年西日本水害調査報告書;*4国土交通省国土政策局(2017)土地履歴調査(長崎地域);*5国土地理院(2017)国土地理院技術資料D1-No.87;*6阿蘇地域土砂災害対策検討委員会(2013).</p>
Journal
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- Annual Meeting of the Geological Society of Japan
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Annual Meeting of the Geological Society of Japan 2023 (0), 478-, 2023
The Geological Society of Japan
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390299760188708864
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- ISSN
- 21876665
- 13483935
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
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- Abstract License Flag
- Disallowed